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6-1 ページ45

side:hiro todoroki





意識がゆっくりと浮かび上がる感覚がして
徐々に瞼が開く。



朦朧とする意識の中で周りを見渡すと
俺は冷たい床の上に寝転んでいた。






「…………っ痛え」







床で寝ていたせいか体の節々を痛めていた。

それに何故かよくみると
自分の体のあちこちに殴られたような形跡があり、
頭の中に疑問符を浮かべる。






「(確か、横須賀駐屯地に潜り込もうとして

そうしたら途中で小笠原に遭遇したから
アイツの所在を聞き出そうとして、


それから…


クソっ…

その後が全然思い出せない。)」






連れ去られたAを取り戻そうと
何とか横須賀駐屯地に侵入できたものの

小笠原と接触した後 自分が盗んだ自衛隊員服の
持ち主の上司らしき人物に侵入がバレて
独房に入れられ、胡散臭い研究者に何かを
言われたことまでは思い出せた。




しかし目的を一向に話そうとしない俺に
痺れを切らしたのか



自衛官数人から、数時間に亘って殴られ続け
意識を失って以降記憶が曖昧で


目が覚めると
この場所にいつの間にか横たわっていた。





ズキリと痛む頭に眉間の皺を寄せながらも
俺は何とか自力で体を起き上がらせ
冷えた床の上に座り込んだ。


壁に寄りかかり
目をゆっくり閉じる。




記憶は曖昧ながらも
自分が意識を失っているとき
誰かが自分を呼んでいるような声が聞こえた。




悲しそうで、切ない声色。





「…………。」





それは何となくAに
似ている声だった気がする。






思い返せば自分の記憶の中のAは
いつも少し悲しそうだった。



だからなのか。


気が付けば小笠原を目で追っていたはずの俺は
自然とAの姿を一番に捉えるようになっていた。









Aが俺に告白してきた、あの日から。




俺の返事を遮って告白を勝手に終わらせて出ていったあの後ろ姿が。





………小笠原が好きだったはずなのに。

間宮と小笠原が付き合う姿に胸を傷めたはずなのに。



悲しそうに
俺に「好きです。」と伝えるAの顔が
どうしても忘れられなかった。




だけど
それから卒業するまで俺とAの間に
あの日の告白の話が再び持ち出される事は無かった。



というより、
Aが意図的にその話を避けていたような気がする。





勝手に告白して
勝手に自分で振られて



俺に、Aへの恋心を残して卒業していった。

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m(プロフ) - ゆずさん» 2回もコメント頂きありがとうございました(TT)纏めてこちらでのお返事で失礼いたします。面白いと言っていただけてとても嬉しいのでこれからも更新頑張ります! (2021年2月23日 22時) (レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - ケイリさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです(TT)更新頑張ります!ありがとうございました! (2021年2月23日 22時) (レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - さらさん» コメントありがとうございます…!等々力くんもミンジュンくんも本当にかっこいいですよね...私も展開が予想できなくて毎回ハラハラしてしまいます笑 (2021年2月23日 22時) (レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず - すごく面白いです。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: a6bc68f3c9 (このIDを非表示/違反報告)
ケイリ(プロフ) - 物凄く面白い作品をありがとうございます!!毎話ドキドキして読んでいます!これからも楽しみにしています! (2021年2月23日 0時) (レス) id: 593c06699b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:m | 作成日時:2021年2月14日 1時

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