君を好きでいるのに理由なんていらない (ページ2)

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episode １ページ2

朝が来る

私は彼よりも少しだけ早くに、
彼を起こさないように静かにベッドから
まだ肌寒いリビングへと足を運んで
二人分の量のお湯を沸かして、朝ごはんの準備をする。

朝は好きだ。
彼の無防備の寝姿を独り占めできる。

普段の日常の忙しさの中で眉間に寄せられた皺と
強ばった表情はこの時だけは和らいだように見える。

その顔をみる度に
この時、この瞬間だけでも
彼を取り巻く環境を忘れさせて
癒しになれたらいいのになと考えてしまう。

彼、神谷将人と出会ったのは
高校1年生の時

ポーカーフェイスを崩さないクールな彼に
入学当初から思いを寄せる女子生徒も少なくなくて

更に学年の中でも成績優秀で、
スポーツの才能もあった彼の活躍を見た女子は
学年を越えて彼に告白する生徒は常に後を絶えなかった。

そんな私も彼に想いを寄せる生徒Aに過ぎなくて
引っ込み思案だった私が彼に告白だなんて
勇気もあるはずも無く

ただ、｢好き｣という気持ちだけ
叶うはずもない片思いだけれど
ひっそりと彼を遠くから見つめていた3年間

このままこの想いを胸に秘めたまま、
答辞を読む彼の背中を見つめて、
高校の卒業を迎えたはず、なのに

高校を卒業した2日後
学校の近くの公園に呼び出された神谷くんに

______｢ずっと君の事が好きだった｣と、

警察学校に進む神谷くんと
美大に進学する事が決まっていた私

その日、突然のお付き合いが始まった。