【歌/い/手】開かずの扉の帰宅部バンド��* −超青春型放課後タイム−

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でもよく良く考えれば冗談だとわかる。

じわじわとその答えに気がついた時に、佐藤先生を見るとニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべていた。


……この人…！


「えー、というわけで合宿開催日は8月1日から3日までです！お家の人には適当に説明しといて！俺は職員会議だからお前らもとっとと帰れよー！」

「あっ、ちょ！先生！」



逃げるように部室から出て行き、もう語尾の方はほとんど聞こえなかった。

残念ながら私の伸ばした手は行き場を失い、ただ呆然と立ち尽くすことしか出来ない。




「合宿中に、1曲……10月までに、5曲…？」


もうそれは、経験の浅い私は今からでも取り掛からないと間に合わないと宣告されたようなものだ。


そして、私は10月までに曲を5曲も作る理由を聞くのを忘れてしまったと帰り道に気付くことになる。



＊＊＊



「お母さん、8月の1日から3日ってなにか予定あったけ？」

「んー？私が夜勤入る程度で特にないわよ？」


夕飯中、テレビに映し出される映像に釘付けの母に、話を割り出した。
まだ視線はテレビに向かっているが、聞く耳はこちらに向かっている様子だ。


「どしたのー？急に」

「あ、いや……」


嘘をつくのは心苦しさがある。

……多少の本音を混ぜて話すことにしよう。


「そこの3日間だけ軽音楽部の部活があって、そこで友達の家についでに2泊泊まりに誘われてるんだけど……」

「あら、いいじゃない！」


母の視線も、テレビから離れこっちのものとなった。

ここからは母が勝手に質問してくるであろう。
ボロを出さないよう身構える。


「お家は？どこの？」

「この間来てた…葉月さん、双子の」

「ああ！男の子と女の子の！」

「うん、ほかの男子も一緒で『ちょっとした合宿みたいなことやろうよ』なんて…」

「あら〜楽しそうね〜、でも部活も３日間だけなんだ？なら本当に合宿くらいしてくれてもねぇ」

「いや！……特にどこかで演奏したいとかあるわけじゃないし、まあ普通じゃない…？」


私もよく分からないけど…と語尾が小さくなっていく。
……テンポよく嘘をつくのは流石にキツイ。


少しだんまりした母は、少し微笑んでから「ごちそうさまでした！」と叫んだ。

「まぁいいわ！とりあえず楽しんでらっしゃい……楽しみね！」

「うん…」

「楽しみならもっと笑いなさい？」



母のその見透かしたような問いに私は何も返せなかった。







……この部活に入ってから、私は、よく嘘をつくようになった。

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