雨に濡れても２【Fischer's】【ダーマ】

４７(ダーマ) ページ6

上目遣いでじっと俺を見つめる中村さん。


引く気は、

無さそうだ。


嫌だと言う理由とかないし、

ダーマと呼びたい理由が、俺にとっては喜ばしい訳だし。


｢別に……いいけど……勝手に呼べば？｣


パァっと笑顔になる。

眩し過ぎて、顔を逸らす。

どんな顔していいのか分かんねぇ。

そもそも俺、

恋愛関係全く絡みのねぇキャラなんだぞ？！


｢じゃあ好きに呼ぶね？ダーマくん！｣

顔は見れないけど、

ニコニコしてんのは何となく分かる。

ちっくしょー、可愛いんだろうなぁぁぁぁ！！


｢あんま馴れ馴れしくしてんじゃねぇよ、別にいいけど。｣


こんなこと言いたい訳じゃないけど、他に言葉が浮かばない……

俺の語彙力どこいった。

いや、あった事ないけど。


クスクス笑う中村さん。

｢ダーマくん、私のことはAって呼んでね？｣


はぁ？！


思わず顔を上げる。


嬉しそうに笑ってる彼女が、やっぱり眩しい。


彼女の言うように呼んであげられれば、

きっと喜んでくれるんだろう。

もっと笑顔にしてあげられるんだろう。


だけど、

そうは、問屋が卸さないのが俺だ。


「どう呼ぶかは俺の勝手だ。」


そうね、とやっぱりクスクス笑う。



彼女がスーツが乾いたかどうか見に行くために部屋を出ていった。


へにゃ〜と力が抜ける。

俺、

どうなってる？

どんなんなってる？


俺がどんなにか恋愛関係疎くても、

さすがに分かる、

中村さんの、

好意。


でも、

それがどんな類のものなのかが

恋愛スキル無さすぎの俺には

分からない。


仲良くなりたいって、

どう言う事だよ？！

俺と同じ？！

いや、違ってたらとんでもねぇ勘違い野郎だぞ？！



分かんねぇ、分かんねぇ、分かんねぇ！！



顔、

バンバンバンってやって、

ゴシゴシゴシってやって。



はぁぁぁぁぁ。


大きく溜め息ついた。


なんかもう、色々あり過ぎて一杯一杯で。


とりあえず、

寝たい。

頭ん中、整理したい。





スーツが乾いて、

それに着替えて。


｢カッコいいね。｣

そう言ってくれる彼女に、


何とか喜んでくれそうな返しをして。


笑顔になる彼女に、


ホントのところを聞きたいと思っても


出来ない自分が


ホントに情けないと


心底思った。






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