雨に濡れても２【Fischer's】【ダーマ】

７２(シルク) ページ32

俺とザカオの事を知ってるってふたりは、多分中学位の俺らの噂を知ってるやつ。

ちょっとやそっとで、売られた喧嘩に負ける
ようなことは無かったから、名前を聞けばビビる連中もいるだろう。

「俺、今最高に機嫌悪ぃから手加減出来ねぇ、全力で来いよ。」

「俺も珍しく、頭に来てるから覚悟してね。」

無理無理！ってふたりは言い出す。

大輝、俺ら抜けるからな！と、あっという間に居なくなった。

残された大輝。

「さぁ、どうする？」

俺は、この手の奴が絶対に許せない。

世の中に色んなタイプの人間がいて、俺と同じ価値観の奴ばかりじゃねぇって事は百も承知している。

だけど、こいつは人として終わってる。

絶対やっちゃダメな事をやってる。

絶対に、許せねぇ。

大輝に一歩足を踏み出した時、ザカオが俺の肩を掴んだ。

「シルク、落ち着いて。これから先は警察に任せるべきだよ。」

これは立派な犯罪だ、そう言い切るザカオ。

「Aちゃんがどうするか決めることになるけど、とにかく彼女の気持ち確認してからだよ。」

ザカオはそう言うと、ツカツカと大輝に近づき、抵抗しても無駄だからね、と耳打ち。

ポケットから財布を抜き取ると、身分証明書になるようなものがないか確認して、

ふーん、いいとこで働いてるんだね、とニッコリ笑って見せた。

そこでやっと、大輝は観念したような表情になった。

そんなザカオを見ていたら、俺も段々冷静になっていって、案外、こんな時に冷静でいてくれるザカオが一緒で良かったって心底思った。


「……何で……」

「ああ？」

「何でここが分かったんだよ。」


Aちゃんのカバンを拾いながら

「さぁな。」

って答えた。


空き家を出てからマサイに連絡すると、

モトキは、ンダホがザカオと同じく緊急招集されたぺけたんと一緒に無事に連れて帰ったって事で、ホッと胸を撫で下ろす。

一緒にいた綾菜って子は、顔を殴られてたから病院へ行こうって言ったんだけど、拒否されたらしい。

放って置くわけにも行かず、今一緒にいるって。


「しかしマサイ、お前すげぇなぁ。」

『何が？』

「お前の作戦、ドンピシャじゃん。」

ああ、その事ね、とマサイが笑う。


『ちょっと興味あってたまたま持ってたから、GPS。』

「渡してたポーチん中にあったんだろ？」

『そ。ダーマの服のポケットにも。』

ダーマ知らねぇんだけど、なんて言うから思わず笑う。

ある意味、敵に回したくねぇ男だわ。


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