雨に濡れても２【Fischer's】【ダーマ】

５２(シルク) ページ11

｢俺さ、ダーマがいっつも人の気持ち大事にしてるとこ、好きだよ。｣

｢は？なんの話だよ。｣


なんで、ゴメンって言ったのか。

それ、ダーマがAちゃんの気持ちを考えたからに他ならない。

ダーマ分かってないみたいだけどな。

それと、Aちゃんの気持ちも分かってない。

Aちゃんが、なんで謝るのかって言いたくなるの、よく分かる。

｢今考えて欲しいのは、ダーマがどうしたいのかって事。いいか、ダーマが、だぞ。｣

自分以外の人の気持ちを優先する余り、自分の本音を閉じ込めてしまうダーマ。

恋愛に、

それは禁物だって事、

ダーマに気付かせなくちゃいけない。


｢俺が……どうしたいか？｣

｢そう、ダーマがどうしたいか。｣


Aちゃんのじゃない、

自分の気持ちをちゃんとしろ。

じゃなきゃ、この難題は解けない。


しばらく考えてたダーマが、

ああ、くそって言って、毛布に隠れた。

わかんねーわかんねーって言ってる。

小学生かよ。

いや、

今時の子はもうちょいマセてるよなぁ。


｢ダーマそんなんだったら、Aちゃん、俺狙っちゃおうかな。可愛いし。｣


ものすごい勢いで起き上がったダーマ。

なんか言いかけて、

ふにゃあと倒れる。

俺のにやけた顔見て、

フェイクだって分かったからだろうな。


ダーマはゴロンと寝転がって、天井をジッと見て。

それから観念したみたいに大きな溜め息をついた。


｢俺、一目見た時からAが好きだと思う。｣

今まで誰かを好きになった事ないから分かんねーけど、と自信なさげに。

｢付き合いたいとか、そんなんは、やっぱよく分かんねぇけど。でも、Aが誰かと付き合うって聞いたら、スゲェ嫌だ。｣


｢呼び捨てになったんだ、名前。｣


えっ！

って顔になって、

いや、これはAが俺の事ダーマくんって呼びたいって言って、私の事はAって呼べって言うから、しどろもどろ。

焦ってんなぁ、別にいいじゃんって思うけど？

まぁ、そこ突っ込んだのは俺だけどな。


｢まぁとにかく、答えは出たじゃん。｣

へ？

ポカンとした表情のダーマ。

｢さっきの、好きだってやつ。それ、Aちゃんに言ってないから、だからゴメンになるんだろ。｣

まだ分からないって顔してる。

｢Aちゃんの気持ちが分からんから、抱き締めるとかして良かったのかなって思うんだろ。だから謝ったんだろ。｣


ダーマは、
何か、ストンと落ちたような、そんな顔になっていた。

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