雨に濡れても【Fischer's】【ダーマ】

３７(ダーマ) ページ42

俺は女の扱いとか、そんなん慣れてないし、どうしていいか分からんし。


でも、一つだけ言える。



｢アイツ、間抜けな顔してたよなぁ。｣


え？


中村さんが顔を上げた。



｢中村さん、案外やるなぁ。気分良かった。俺が中村さんの立場だったら同じ事してたわ。｣


いや、もっとやってたかも。


そう言うと、

中村さんが少し間を置いて

フッと吹き出した。


クスクス笑い出したので、シーシー！って言って、中村さんが慌てて片手で口を塞ぐ。


ふたりで顔を見合わせて、やっぱりクスクス笑う。


良かった、笑った。


｢武田さん、ホントにごめんなさい。それと……ありがとう。｣


｢いや、なんでもねぇよ。｣

間に合って良かった。

彼女に何もなくて良かった。

心底、そう思った。




｢あ｣

と中村さんが言う。

そして見る見る顔が赤くなっていく。


｢あ｣


手、繋いだまま。


パッと手を離す。


｢ご、ごめん！いや、あの……ごめん……｣

｢いえ……私こそごめんなさい……｣


ああああああああ！


ダメだ、俺こういうのホント苦手！！


何とかしてこの空気を変えたい、いたたまれない、どんな顔していいのか分からない。




｢あの……マサイさんとンダホさん、大丈夫でしょうか？それからシルクさんもって。｣


中村さんが話を振ってくれたから、

ちょっとだけ空気が変わった。

はぁ、助かった。


でもなんだろ、あいつらが心配なのは俺も同じなんだけど、中村さんが心配してるのちょっとモヤモヤすんの、俺案外とちっちぇーなぁ。


｢大丈夫。俺のダチだから。｣


ニッと、笑って見せると、中村さんも安心したように笑った。



ホッとしたけど、さて、これからどうしようか。

時間が時間で、もう夜っちゃ夜。


薄暗くなってきてる。


正直身体しんどいし、中村さん送っていってシルクんちで寝たい。



｢うち、近いんだろ？送ってくよ。｣


｢え、あ、そんな大丈夫です。一人で帰れますから！！｣


俺の言葉に驚いた的な顔をしてる。


いや、心配だから送らせてよって言って、

申し訳なさそうに、じゃあお願いしますって言う中村さんの顔がもうね、反則。



もう少し一緒いたいって言う思いもあったのは、


まあ、内緒だ、内緒！！






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