雨に濡れても【Fischer's】【ダーマ】

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あれから３ヶ月。


会いたくて、

お礼が言いたくて。



｢んー、今日もメガネくんには会えないかなぁ。｣

名前も分からないあの人の事を『メガネくん』って呼ぶようになって、

毎週土曜日の夕方に公園へ行っては、メガネくんを探していた。

もちろん、時間があれば立ち寄る事も忘れなかった。



あの時の心の傷は癒えた訳では無いけど、会いたい想いが気持ちを紛らわせてくれてるように思う。



何でかなぁ、何で会えないのかなぁ。

毎週土曜日、プラスアルファ、もう３ヶ月。

メガネくんの睨む様な目しか、もう思い出せない。

でも、思い出すと心が温かくなる。

ぶっきらぼうに私の手に傘を持たせて、その手を優しく上からギュッとしてくれて。

タオルで頭を拭いてくれたのも、ガシガシってされてるのに痛くなくて、優しくて。



それなのに、顔はニコリともしなかった。

むしろ怖い顔。



ふっ、ふふっ。


なんか、笑ってしまう。


きっと、凄く優しい人。

でも、不器用な人。


そんなことを考えてたら、時間はあっという間に過ぎていく。


｢あ、ヤバッ！もうこんな時間！！｣


気がついたら周りは結構に薄暗くて、あの日みたいに街灯も点いてて。

何となく、メガネくんに怒られてしまう気がするから、慌ててベンチから立ち上がった。


その拍子に傘がパタンと倒れてしまった。


しまったぁ、メガネくんの傘っ！


｢はい、大丈夫？｣


通りすがりのジャージ姿の男性が傘を拾ってくれた。


｢すみません、ありがとうございます。｣

もーやだ、鈍臭いんだからぁ。



｢あれ？……なぁモトキ、この傘……｣


ジャージ姿の男性が、自分の後ろにいた男性に声を掛ける。

｢んー？あれ、これって……｣


２人で顔を見合わせる。


｢｢ダーマの傘っぽい。｣｣


そして２人同時に私の顔を見た。



｢え？｣


｢まさかだけど、雨に濡れてた人？｣





メガネくんに繋がる、初めての手掛かり。






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