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冀望※ ページ16

「俺ァ、...本気だったんだよ。」


鼻と鼻の先がくっつきそうになるくらい顔を近づけて、悔しそうに歯を食いしばった銀ちゃんはそう呟いた。

責めているとか、そんな単純なものじゃない。
何がいけなかったのかという後悔にも似た問いかけと、引き止められなかった自分への憤慨。
そして途方もない喪失感。

銀ちゃんの想いを私がどれほど踏みにじり冒涜したのかを痛烈に感じた。


(ごめんなさい、ごめんなさい、)


複雑な言葉など並べても無意味なことはわかっているのだ。
ただただ心の中で呪いのように唱え続ける。



前戯の殆ど無い行為は、あまりにも荒々しく、ただ欲をぶつけるだけの空虚なものだった。

注がれるのはそのどろりとした白濁のみで、愛情なんてものは何処にもない。



「.....野郎と同じ穴にぶち込んでるって考えるだけで、吐き気がする。」



いつもなら何度も名前を呼んでくれて、
甘いキスも沢山落としてくれる。

今日はそれら全てが失望に塗り潰されてしまっていて、後に残るのは理性の外れた本能ぐらいのものだった。

私のあげる嬌声すらも、鬱陶しがる。

たった一度の浮気でここまで嫉妬心を剥き出しにし、身体を求められるとは少し予想外だった。
銀ちゃんはこんなにも、私を愛してくれていたんだ。



「....んぁっ。ぎんちゃん、やっ。」



場違いの愛おしさすら芽生える。
壊れてしまいそうな程に求められている気がして、身体が反応しているのがわかった。

連続の行為のせいでもう全身疲れ果てているというのに、銀ちゃんはなかなか許してくれそうにない。

首元のマークを忌々しそうに見つめると、がぶりっ。
歯形を残すように噛み付いた。


「い"っ...痛。」

「なに跡までつけられちゃって。たかがキスマークなんてなまっちょろい印じゃ足りねえってか?」


絶対ェに消えない傷痕でも付けてやりてえくらいだ、と口走る。
銀ちゃんもある意味興奮状態が頂点に達しているみたいだ。




「.......なぁA、なんか言えよ。」




なあ。


実は浮気なんてただの勘違いで私は今もこれからもずっと銀ちゃんのことが好きだよ、と。
そんな返答を求めているみたいな。
乱暴に抱いておきながら、まだ淡い希望を捨てきれていないみたいな顔。

胸のそこからせり上がってくるみたいに、彼のことが好きだと思った。



「銀ちゃん、キス。して。」



両手を伸ばしても、突き刺さるのは冷徹な視線だけだ。

銀ちゃんはもう私を甘やかしてはくれない。

破綻→←沈痛



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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月見おはぎ - ただの思い過ごしかもしれませんが、物語の中にDOESさんの曲名が入っていて銀魂愛を感じました。最高のお話を有り難うございます。 (2021年9月26日 18時) (レス) @page11 id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - コメントするのこれが初めてです、、今まで読んだ作品で一番切なくて一番胸が痛くなって一番感動したお話でした。素敵な作品をありがとうございました。。 (2020年3月17日 23時) (レス) id: 97657b2818 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» 燻った想いたちが不完全燃焼の状態で終焉を迎える。そんな物語を目指しました。そのようにおっしゃって頂けてうれしい限りです。課題頑張ってください...!高杉長編と沖田の心中ロメオを更新しております。そちらの次作でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年7月31日 21時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
なるぽんず - 読んでいて胸が苦しくなるような、心に響くお話でした。読み終わった今も悶々とした気持ちでいます。夏の宿題の読書感想文、できることならこれで書かせていただきたいくらいです(;_;) 切なくて悲しいけれどじんとくるお話をありがとうございました。次回作楽しみです (2017年7月31日 13時) (レス) id: fa67502a01 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - ローズさん» 執筆している側としても居酒屋あたりを思い返すと、考えさせられるものがあります....。最終話以降の展開の細かい展開は、やはり読者様達の御想像にお任せしたいとおもいます。こちらこそ、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年6月10日 21時

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