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明らかに相手の男の叫び声ではなかった。まさか。一体どうして。
その疑問の答えはすぐにわかった。
「テメェ……阿妻A!!!!よくも駿を斬りやがったな!!!その卑怯な仕込刀で!!!!」
『卑怯だと?アンタらが言う資格はねーぜベイビー。そのトランプ、イカサマトランプだろ。目を凝らしてじっと見てみると裏面の模様が少し違うぜ。』
「駄目だ兄貴、即死だ!喉元掻っ切られた!!!」
なんと、あの男……阿妻Aは組員を一人殺ったらしい。なんの躊躇もなく一瞬で、仕込刀で喉元を掻っ切って。
どうやら、面倒なことになったのはあの阿妻とかいう男ではなくヤクザの方らしかった。
『斬ればいいといったが、やり返さないとは言ってない。俺は平和主義者だが……無抵抗主義のバカではない。さぁ早くその引き金を引いておくれよ。流石に無抵抗のヤツを殺すのは気が引ける。』
「平和主義だと……笑わせるな!!かかれ!!!かかれ!!!兄弟が殺されたぞ!!!仇を取」
……なんだかマズイことになってきていないか?此処から逃げたほうが良いのではないか。
だが下手に動くと片道切符で地獄行きだ。どうしたものか、とアカギは悩んでいた。
そう悩んでいるうち、隣は静かになり、足音はこちらへと向かってくる。
ヤバイ。殺られる。
スパン、と障子が勢いよく開く。
障子の向こう側には、バケットハットを被った男が立っていた。
黒い髪と目がとても綺麗な男だった。こんな状況でなければ見惚れていたに違いないくらいの。
『なんだよ。まだ逃げてなかったのか?アンタもどのみちアイツ等に殺されちまうぜ。いや、もうちょっと手遅れなんだが……』
男が面倒くさそうに、ちょっと困ったように言う。
アカギはこのちょっぴり困った顔に確信を持った。
この男は自分に死んでほしくは無いのだ、と。
何故そんなことをこの男が思っているのかなどわからない。だが、自分が生きて帰るための最善の策はコイツしかないと思った。
アカギは阿妻にこう話しかけた。
「じゃあ、アンタが俺を逃がしてくれよ」
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作者名:ロス | 作成日時:2022年1月26日 0時