YouTuberと愛Tuber (ページ2)

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「初めまして！今日からお世話になります、Aと申します！得意なことはピアノです！よろしくお願いします」

広い家の中で拍手が起こる。
ここはYouTuber『水溜りボンド』の、いわば『水溜りハウス』。
なぜ主人公がこんなところにいるのか、まず説明しなくてはならない。

主人公は残り１年の寿命だ。

それをわかった上で主人公は「残り一年を楽しく過ごしたい。わたしがしたいことをし尽くして、悔いのないまま天国に行きたい」という。
そして、それを記録に残したいという。

「ばかかよ...ゆっくり休めばもう少し長く生きられるのかもしんねぇんだぞ?!なんでお前はいつもそうやって...!」
「翔ちゃん、落ち着いて。」
病室のベットの横に立つのは分家の次男と幼馴染。
「...潤ちゃんにはさ、いっぱい迷惑かけちゃったよね。私が本家だからって偉そうにしてさ...。でも、あと1年で私とは離れられるから、もう少しだけわがまま言ってもいいかな....っ」
Aは喉をつかえさせながら悔しそうに布団の裾を握りしめて言う。
潤ちゃん、水無月潤。
神無月家の分家である水無月家に生まれ、17年間Aに寄り添い続けている分家の次男である。

「...泣かないで。俺は全然大丈夫。Aの傍にいられるだけで、充分だから、」
冷静な潤とは対極にもう1人の男は短気でキレ症だ。
「なんでAが死ぬことは確定してんだよ...!オレたちで助けようぜ！！今なら世界中の医者かき集めてどうにか....っっ！！」
「..はは、翔ちゃんは優しいなぁ。でも、もう無理なんだ...どう足掻いても、無駄、なんだよ。」
新垣翔。神無月 Aの幼馴染である。

Aは優しく微笑むとなにも言い返せなくなってしまった翔と潤に改めてお願いをした。

「...これが最期の神無月Aのわがまま。3人で、YouTuberになろう」

よく晴れた夏の日のことだった。