声をきかせて (ページ50)

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あの日珍しくスヨンから真面目なLINEがきた。

そんなLINEを送ってくる時は何かある。

長年付き合ってきた勘みたいなものがあって

映画の撮影が入ってた俺は適当に都合をつけて指定されたいつも待ち合わせにしていたカフェに向かった。

奥の窓際のソファー席。

それが彼女の特等席。

いつも先についている彼女はその席から外を眺めてるんだ。

その日も案の定先についていて

外を眺める彼女の視線が悲しげだったのは気のせいだろうか。

T "ごめん。待った？"

Y 『ううん。今来たとこ。』

そんなお決まりのセリフ吐いて

目の前の席に座れば少しはにかんで俺を見るんだ。

T "は？ドイツ？"

Y 『そう。ドイツ！お母さんの夢が叶うの。ドイツのね交響楽団にお母さんがピアニストとして呼ばれたの。』

T "だからってなんでスヨンも？"

Y 『向こうで耳の手術受けようと思う。確率は60%だし、もしかしたら視力も失うかも。でもさ、40%にかけてみようと思って"

T "じゃあ。手術終わって落ち着いたらスヨンだけ先に帰って来れば？"

Y 『無理。あの人が私を手放すとは思えないし、耳が聞こえなくなってからは特に私の事心配みたいだし。それにね。私も住み慣れた街とは言えは一人は怖いよ。今まで散々心配かけた分次は私の番。お母さんのそばにいたいの。"

T "怖いって。俺もいるし、俺の両親や姉貴も。それにジヨンもいるだろう？"

Y 『もし、失敗したら聴力だけじゃなく視力もなくすんだよ？迷惑しかかけないのにそんなの無理だよ。』

T "で、この事ジヨンは知ってるの？"

そういうと彼女は困ったように笑って首を横に振った。

Y 『そういえば、スンヒョンのメンバーの子何気に手話覚えてるよね。』

T "あ？あぁ。そうだな。"

Y 『なんで？同情？それともボランティア？』

T "みんなスヨンと話したいんだよ。スヨンは昔からみんなの姫だからな。"

Y 『姫？』

T "そう。姫だよ。"

そう。

まだ幼かった頃。

まだ彼女が耳が聞こえていた頃から

姫だった。

気高くて

可憐で

自分を持ってて

かっこよくて

俺はそんなスヨンに憧れていたし

そんなスヨンが羨ましかった。

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