声をきかせて (ページ43)

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海を見ると思い出す。

あの日彼が私を好きだと言ってくれた

あの日私も人並みに誰かに必要とされてて

愛されてもいいんだって

耳が聞こえなくなって

初めて本気でそう思えた。

Y 『ドイツ？』

母 "そう。ドイツの交響楽団にね来ないかって誘われたの。"

Y 『すごいじゃん。おめでとう。』

母 "ありがとう。でねスヨン。もちろん付いてきてくれるよね？"

Y 『へ？』

母 "まぁ。スヨンも仕事もあるしすぐにとは言わないけど、付いてきてほしいと思ってる。考えてくれないかな？"

Y 『行くとしたらどれくらい向こうに行くの？』

母 "三年かな？"

三年…

これが長いのか短いのか

わたしにはよくわからない。

でもドイツの交響楽団でのピアノ奏者になることがどれほどの名誉がある事で

母もそれを夢見てた事を知ってた。

応援したい反面

韓国から離れる事への不安もあって

少し前の私なら悩まずに即答でついて行くことを選んだ。

でも今はジヨンと居たい気持ちが大きくて

すぐに首を縦に振れなかった。

母 "あとさ、スヨン。もう少ししたらピアノコンクールがあるんだけど、出てみない？"

Y 『え？いいよ。耳が聞こえないし、そんなコンクールなんて無理だよ』

母 "スヨンのピアノお母さんは好きよ。きっと大丈夫。自分のピアノを試してみなよ"

Y 『でも・・・。』

母 "やる前から諦めるなんてスヨンらしくない。自信持ちなさい。あなたのピアノは胸を張っていい実力よ。"

そんな後押しもあって出たコンクールで

私のこれからを左右するなんて

この時は気づかなかった。

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