声をきかせて (ページ36)

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戸惑いを映す彼女の瞳をサングラス越しに見つめた。

そっと腕を離すと

何を話していいのかわからなくて少しの間の沈黙。

Y 『何？どしたの？』

G "いや。スヨンこそ。オシャレしてどこ行くの？"

Y 『え？あー。ちょっとそこまで白馬の王子さまでも探しに？』

G "じゃあここにいる白馬の王子がお供しましょうか？"

Y 『馬鹿じゃないの？あなたは白馬と言うか虎に乗ったガキ大将でしょ。』

G "何それ。"

そんな冗談を言い合って笑っていたら

視界の端に見覚えのあるスーツ。

ジュンスという彼が立っていた。

俺の目線の先に気づいた彼女が振り返り彼を見つけると軽くお辞儀をして

その姿が気に食わない。

ジ "ごめんね。待った？あれ？その人は？"

Y 『いえ。今来たところなので大丈夫です。この人は、ただの友達で偶然会っただけなので。じゃあジヨン。またね。』

そういい去って行く二人を見送って

悔しいけどお似合いな二人に嫉妬した。

迷わずメモリーからあいつの連絡先を出してダイヤルした。

G "昼飯奢ってやるから、秒で来いよ。"

そう言って一方的に切った電話。

二人の去った後を追うように歩みを進めた。

少しして息も絶え絶えにやってきたあいつ。

S "ヒョーン。弟扱いが雑。"

G "うるさい。黙ってついてこい。"

二人が入ったレストランの入り口で口論しながら

二人からは死角になりつつ

こちらからはバッチリ目に入るベスポジをキープ。

隣でニヤニヤするスンリに少しイライラしながら

二人の会話に耳をすませて

ルンルンと音符まで付きそうなスンリは

遠慮もなく昼間から高いコースを頼んでて

俺は何も喉を通らないほどにドキドキしてた。

微かに聞こえた声は

彼女のこれからの将来の話。

でも

彼女が席を立った後に聞こえた声は

耳を疑うような

腹わたがが煮えくりそうな声。

"耳が聞こえない美人ピアニストってだけでもいいビジネスになるのに、元天才バイオリン少女ってわかったらもっと話題性があってみんな飛びつきますよ。いい商材です。今日纏めますよ。彼女、俺に憧れてるみたいなんでどうとでもなります。"

彼女を商売道具としか見ていない彼に苛立ちを覚えながら

必死に爪が刺さるほどに手を握りしめるしかできなかった。

耳の聞こえない彼女を利用しようとする彼

それを知らずに憧れを抱く彼女。

あまりに残酷な現実。

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