声をきかせて (ページ31)

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T "あの日のジヨンの取り乱し具合はすごかったな"

G "たっぴょんも青ざめてたじゃん。あれ見たときさ、きっと耳が聞こえたらバイクと接触する事もなかっただろうし、音の闇から救うとか言ってたくせにさ俺何もできてないしって凹んだ"

T "あれはしかたがないといえは仕方がないだろ。でも今のスヨンがあるのはお前のおかげだよ。"

G "どうゆう事？"

T "あいつお前に会ってからなんだよ。あんな風に楽しそうに手話で話すようになったの。それまでももちろん話してたけど、どこか手が遠慮がちでさ、あー。見られたくないんだなって思った。"

G "そっか。"

T "だからお前には感謝してるんだ。俺はあいつが耳聞こえてた時から知ってたけど、お前と会ってからのあいつのはすごく楽しそうで幸せそうだったよ。

そういうたっぴょんの目線の先にはグランドピアノ

もうそこに座っているのは彼女ではないのに

愛おしそうに眺めるたっぴょんの横顔から目が離せなかった。

Y 『は？無理！』

G "お願い！今回だけ！な！頼むよ！"

Y 『それこの間の時も聞いたし。ジヨンの"今回だけ"は何回あるの？』

G "今回はその・・・この間の俺のやつ見た社長がさ、スヨンのピアノの音気に入ったみたいなんだ。でさ、今回スンリのソロのアコースティックverでピアノ弾いてくれないかって"

Y 『で？やれと？』

大きなため息をつく彼女の横で必死に頭を下げる俺

傍目に見れば相当不可解な光景だろう。

Y 『ねぇ。ちゃんと私が耳聞こえない事言った？耳が聞こえないってわかったら別の人探すんじゃないの？私よりも適任なんていくらでもいるでしょ？』

G "あ・・・それは言ったよ。それも承知でスヨンに弾いてもらいたいって。"

そういうと一つため息をついてうなだれると

ゆっくり顔を上げこちらに向き直るとただ一言

Y 『キルフェボンのタルト。』

G "へ？"

Y 『シャインマスカットのやつね。ピースじゃないよ！ホールのやつ。それで手を打つ。その感じじゃ、どうせ社長に頼まれて断るに断れなくてダメ元で来たんでしょ。あなたの顔立ててあげるかわりに買ってきてね！今度日本行くんでしょ？』

G "え？いいの？"

Y 『楽譜早めに持ってきてね。でも本当にこれが最後。わかった？』

そう言って笑った彼女に俺もつられて笑った。