【不死川実弥】風柱、少女を拾う。

さんじゅういち ページ31

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その日、Aは綺麗な着物を身にまとっていた。

そして不死川の前をくるりと回ってみせる。



「さねみ、どう？可愛い？」



「似合ってるぞォ」



その言葉を聞いて、Aは嬉しそうに不死川に抱きついた。

寂しさを吹き飛ばすように、ぎゅっと腕に力を込める。



「たまに会いに来てね」


「たまに、なァ」


「来なかったらのろうから」


「そんな言葉誰に習ったんだァ？」


「誰でもいいでしょ！」



頬を膨らませ不死川を見上げるAの瞳は、ほんの少しだけ潤んでいた。

そんな彼女の頬を、優しく不死川の手が撫でる。



「幸せになれよ」


「私、もう幸せだもん。これ以上幸せになれないよ」



不死川の頬に擦り寄って、Aは目を閉じた。

この人に触れるのも、もう最後かもしれない。
そんな気がしてならなかった。



「おら、もう迎えに来んぞ」


「あとちょっと！」


「仕方ねェな」



フッと笑みを零し、不死川はAの額に唇を近付けた。


これくらいは許してくれよ、麻凰。



「え？さ、さねみ!?今の……」


「うるせぇ、もう行くぞ」


不死川は耳まで赤くなって、照れ隠しに玄関に向かって歩き出す。

その後ろを、更に真っ赤になったAが追いかけた。





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