【不死川実弥】風柱、少女を拾う。

じゅうなな ページ17

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不死川が部屋に籠り、約数時間が経った。

いつもならAが直ぐに不死川の部屋に突撃し、彼の心を優しく溶かしてしまう所だが。


今回ばかりはそうもいかなかった。


不死川の表情をみたAは、自分の胸も痛くなった。
ニコニコと笑顔を浮かべることすらできない程、苦しくなってしまったのだ。

しかしそんな感情の名前もまだ知らないAは、どうすれば不死川が笑顔になるのかを必死に考える。


わからなかった。


考えることすら久しぶりなAは、随分と悩んだ。
しかし、"これ以外"何も思いつかなかったのだ。


Aは意を決して、不死川の部屋の襖をそうっと開いた。



「視界に入るなって言ったよなァ」



ドスの効いたその声に、身を縮ませながらもAは不死川に近付いた。

そして、ギュッと彼の頭を抱きしめる。



「おいッ……！」



「しゃねみ、すき」



いつもよりも弱々しいAの声。
不死川は、思わず喉が締め付けられるような感覚に陥る。

そしてその瞬間、ポタリと温かいモノが髪に落ち、額へと流れてきた。

咄嗟に不死川が上を向けば、Aが大きな瞳からポロポロと涙を流しているのが見える。


「泣いて、」


「しゃねみ、いたい？ここ、いたい？」


そう言って、Aは不死川の胸板にそっと手を重ねる。


「いたい、の、とんで、いけ！いた、いの、とんでけ！」


何度もそこを撫でながら、Aはずっとそう繰り返していた。

不死川は、そんな少女の姿に更に胸を痛める。

しかし、彼女をそっと抱きしめて、こういった。



「もう痛くねェよ……悪かったなァ」



ようやく優しげな声を聞くことができたAは、安心したように笑顔を浮かべる。



そして二人が笑い合った後、不死川邸に怒りを露にした胡蝶しのぶと、困ったように眉を下げる炭治郎が現れたのだった。



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