アラニュエの森 (ページ41)

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「えぇー、嘘！そうなの？」
「そんなとこで嘘ついてどうするってのよ。地球を出たとき、三十歳とかそこらでしたかね」

その後は分からない。

地球時間だと、あれから何年経ったのだろうか。

まだ、地球は存在しているのだろうか。

遠くを見て考え始めた二宮を見て、マサは黙り込んだ。

「……ニノ」
「ん？」
「ニノは、地球に戻りたい？」

目をパチパチさせた二宮。

なるほど、マサにはそう見えたのだろうか。

「戻りたいとか言う以前に、そもそも戻れないんで。考えもしなかったですね」
「え、そうなの？」

二宮は肩をすくめる。

宇宙船を確認しに行った櫻井から話は聞いた。

「いくら宇宙船が残ってても、エンジンも空気も水もダメってなったら、さすがにね」

壁の穴くらいなら、誰でも直せる。

そのくらいはできないと、そもそも宇宙を航行する許可は出ない。

ただ、エンジンとなるとさすがに話は別だ。

「直せないの？」

不思議そうな顔をしているマサ。

「本来、エンジンが壊れたら丸ごと取っ替えるのが普通なんです。そのくらい、普通の人が直すのは難しいんですよ」

そして、そこまでの技術が二宮を含め三人にあるかと言われたら、正直なところ微妙だ。

三人とも基本的な知識はあるため、空気循環と水再利用システムくらいなら直せるだろう。

通信に関してはすでに何度か直しているし、観測機器の故障は直せるものなら直せるし、そもそもなくても大丈夫なものもある。

ただ、エンジンだけは違うのだ。

そして、エンジンが直らなければ、そもそも飛べない。

「地球どころか、宇宙空間に出ることももうできなさそうなんで。落ちた時点で野垂れ死ななくて、よかったんだかどうか、って感じですよ」

目を丸くしていたマサが、ふーんと小さく呟いた。

「前から思ってたけど、ニノってサクとは違うよね」
「そりゃ違う人間なんで」

優しい人間には見えないだろう、というのは自分でよく分かっている。

じっとマサが二宮を見ているのに気づいて、また二宮はマサを見た。

「何か？」
「いや……ニノって面白いなあって」
「はい？」

顔をしかめた二宮。

一体、どの部分からそう思ったのか。

「サクは一緒になって考えてくれたり、こうしたら？って提案してくれるけど、たぶんニノってそういう人じゃないよね」

あぁ、と二宮も頷く。

悩み事の話か。