アラニュエの森 (ページ37)

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「あれ、サト先生。どうされたんですか？今日はもう授業ありませんけど」

最初にすれ違ったのは、教務課の人だった。

いつだったか、家にまできた人だ。

「知ってる。マサのことで話がしたくて来たの。どこに行けばいい？」

ちょうどよかった、とその人に聞けば、うーんと腕を組まれた。

「マサって、サト先生が保護してるあの学生ですよね」
「そう」
「それなら学生課じゃないですか？すぐ伝わりますよ」
「わかった、ありがとう」

サトは頷いて、踵を返した。

そのまま飛ぼうと、手に持っていた箒に座りかけたら、さすがに止められた。

「建物内は飛行厳禁です！」
「はーい、ごめん」

肩をすくめて、サトは歩き出した。

しばらく歩いて、周りに誰もいないことを確認すると、そっと箒に乗る。

「建物の中は飛んじゃダメっていうけど、広い方が悪いよね」

そのまま、バレない程度に急いで学生課まで飛んだ。

夜のため、ほとんどの授業は終わっている。

学生たちは、帰るか学園の寮にいるかのどちらかのため、この時間に廊下を歩いている学生もほぼいない。

ちょうど学生課の前まで来たときに足音が聞こえてきて、サトは慌てて箒から飛び降りた。

角から姿を現した一人の先生。

「あれ、サト先生じゃないですか。こんばんは」
「こ、こんばんは、タツ先生」

よりによってタツ先生だったのか。

顔をひきつらせながら、サトも挨拶をする。

「サト先生、どちらから来られました？足音が聞こえなかったように思うんですが」
「いや、そのー……いつ学生課に入ったらいいかな、とタイミングを伺ってまして」

じっと手に持っていた箒を見られ、サトは目を泳がせる。

タツ先生の視線が痛かった。

「そうだったんですね。てっきり私は建物内を箒で飛んだのかと思いましたよ」
「はは……そんなことするわけないじゃないですか」

そう言いながらも、これはバレているな、と分かっていた。

気づいていなければ、わざわざこんな言い方はしない。

「サト先生？」
「すいません……飛びました……」

諦めて謝れば、苦笑された。

珍しく、それ以上怒ってくる様子はない。

「急いでるようですけど、学生課に用事があるのは本当なんですか？」
「あ、それは本当です。マサのことで」
「マサ……あぁ、なるほど」

納得したらしいタツ先生は学生課のドアを開け、どうぞ、と案内してくれた。