#泥だらけ ページ35
二宮と松本が庭から呼ぶ声がしたのは、櫻井がご飯を食べ終わり、マサが片付けをしていた頃だった。
ユキと並んで庭に立っている。
本を読んでいた櫻井が振り返って、顔をしかめた。
「うわ、泥だらけになったね」
「気づいたらこうなってました」
そう言って二宮は苦笑している。
ユキは元々茶色いが、それでも泥だらけになっているのが分かる。
「どんな遊びをしたらそうなるの」
「すんません……つい子どもみたいに」
松本は気まずそうな顔をしていた。
「でも、楽しかったっすよね」
「うん、楽しかった」
「楽しそうなのは見てて伝わったけど」
あんなに楽しそうにはしゃいでいる、二宮と松本を見たのは初めてだ。
それなりの付き合いにはなるが、今まで見た中で一番楽しそうだった。
「わ、遊んだね……俺が綺麗にするよ」
片付けが終わって、振り返ったマサも目を丸くする。
近くに置いてあったマントを羽織り、二人の元に向かった。
「迷惑かけます」
「このくらい、いいよ。もしも失敗したらごめんね」
「え」
不安そうな顔になった二宮と松本。
マサの人柄自体は信用しているらしいが、マサの魔法は信用できないらしい。
「失敗して大事になるような魔法は、俺らにはかけないでよ」
「大丈夫、得意な水魔法と風魔法しか使わないから。失敗しても大事にはならないよ！」
へへ、と笑ったマサは、真剣な顔になった。
マサが両手を広げると、パッと服が綺麗になる。
泥がついていた手や顔も綺麗になっていた。
「どう？」
「わ、綺麗になった」
「成功したね。よかったあ」
ユキは洗おっか、とマントを脱いでから、マサは庭に出る。
「二人は家に入って大丈夫だよ」
「ありがとう」
「いいえー」
庭の隅にある池の中に飛び込んだユキ。
水が跳ねて、飛沫でマサはびしょ濡れになった。
間一髪で、家の中に入っていた二宮と松本は無事だ。
「わっ……ユキ、やったなあ〜」
軽く怒りながらも、結局マサも池の中に飛び込んでユキを洗っている。
なんだかんだで楽しそうだ。
「二宮も松本も、楽しむのはいいけどほどほどにね」
「はーい」
返事をして、床に寝転がった二宮。
かなりこの家に慣れてきたらしい。
「二宮、そこで寝るなよ。邪魔だよ」
「乗り越えていってくださーい」
「はあ？ 蹴っ飛ばすぞ」
「それはやめてくださーい」
二人の会話に苦笑して、櫻井はまた本に目を落とす。
兄弟のような二人だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 273人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2021年2月15日 22時
