アラニュエの森 (ページ34)

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「マサは学園に残るの？」

考えていたことをちょうど櫻井から聞かれ、マサは苦笑した。

「どうしようかなって思ってる。悩んでるんだよね」

うーん、と庭をぼんやり眺めたマサを見て、櫻井はじっとマサを見た。

「サトは何か言わないの？」
「サトちゃん？サトちゃんは好きにしたらいいって言ってる」
「なら、好きにしたらいいんじゃないの？」
「うーん……」

そう単純な話でもない。

サトは好きにしたらいいと言うが、いつまでもサトのお世話になるわけにもいかない。

サトは何も言わないが、自分が居候していることでいろんなものが余計に必要になっているのは、間違いない。

特に、櫻井たちもいるとなれば。

「やっぱり、お金の問題ってあるんだよね」

ぽつ、とマサがこぼした言葉に、櫻井が苦笑した。

「学園に通うの、お金かかる？」
「うん。教科書とかお金かかるし……なにより、生活費がね」

四年生になっても学園に通うなら、学費を払わないといけなくなる。

安くはない金額であることを考えると、それだけでためらう理由になる。

「今はサトが出してくれてるの？」
「うん。この家に転がり込んだときはサトちゃんにお金渡してたんだけど、途中からサトちゃんがいいよって受け取らなくなっちゃって」

なるほどねえ、と櫻井は呟いた。

「サトはマサのお父さんではないんでしょ？親戚でもないの？」
「うん、違うよ。サトちゃんとは本当に、学園の先生と学生ってだけ」
「なら、気を使うよね」

改めて考えてみると不思議な状況ではあるものの、櫻井は深くは聞いてこない。

うーん、と櫻井も悩み始めた。

「進路の悩みは難しいよね、正解ってないから。でも、勉強したいならそのまま学園に残っててもいいんじゃない？」

その言葉に、櫻井の顔を見たマサ。

「ちゃんと話したら、サトも考えてくれるんじゃない？まあ、それなりの成果は出さないといけないとは思うけど。サトに聞いてみたら？」

マサは目をパチパチさせた。

「悩んでるってことは、学園に残りたいっていう気持ちがあるってことでしょ？」

悩んでる理由がお金なら、やっぱりサトに相談してみるべきだよ、と櫻井は頷いている。

「……そっか」

櫻井に言われて気づいた。

自分は、学園に残って勉強をしたかったのか。

「ありがとう、サク。サトちゃんと話してみる」
「うん、それがいいよ」

櫻井は優しく微笑んだ。