アラニュエの森 (ページ4)

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「サトちゃん、学園の人帰った？」

家に戻るなり、マサが窓から顔を出す。

「帰ったよ。帰ったというか、帰らせた」

サトは頭を掻きながら、マントをバサッと脱ぐ。

マサの足元をうろついていた犬が、サトの足元に駆け寄る。

飼っている犬のユキだ。

ユキとは言うが、白い犬ではなく茶色の毛の犬だ。

サトがユキを撫でると、ユキは気持ちよさそうに目を細めている。

「やっぱり講義の話？」
「そう。マサもちゃんと授業には出なよ」

マントを椅子にかけて、また同じように古い本に向かったサト。

「俺はちゃんと学園には行ってるよ。サトちゃんは先生じゃん」
「先生をやりたくて研究してるわけじゃないの。研究したくて研究してるの」

またマサの足元をうろつき始めたユキを見て、マサは苦笑した。

「サトちゃんはそうだろうけど、講義はしなきゃ生活に困ることになるよ。ユキ、ご飯食べよっか」

ワン、とひとつ吠えたユキと一緒に、マサは台所へと消えていく。

「生活に困る、ねえ」

サトは小さく呟いて、うーんと伸びをした。

「あーあ、空から本でも降ってこないかなあ」
「変なこと言ってないで、サトちゃんもご飯食べるならおいでー」

マサの声に、はいはい、とサトも立ち上がる。

台所に向かおうとしたとき、外からバキバキという大きな音と振動が聞こえてきた。

「えっ」

サトもマサも、咄嗟に窓の外を見る。

ワンワン！と吠え始めたユキをなだめながら、マサがサトの顔色を伺う。

サトは険しい顔になっていた。

「結界、張ってるんだよね」
「うん。なんなら外部の音も聞こえないようにしてるし、ここの音も外には聞こえないようにしてる」
「ってことは、敷地内から聞こえた音だよね？」
「としか考えられない。結界に異常はないし……可能性としては」

指を一本立てたサト。

「……空？」

マサが目を丸くした。

「何かが空から落ちてきたのかもしれない。空に対しては結界自体は張ってないから。確認してこないと」
「あ、待って。俺も行く」

マントを手に取ったサトを見て、マサも慌ててソファに置いていたマントを手に取る。

「飛ぶよ。近いとは思うけど、何が落ちたのかわからないから」
「わかった」

ユキはちょっとお留守番しててね、と頭を撫でるサトを横目に、マサは庭に出て箒を二本持ってくる。

「はい」
「ありがと。行こうか」

箒に腰掛け、ふわりと浮いたサト。

マサも箒にまたがって、ふわりと浮き上がった。