アラニュエの森 (ページ24)

今日:1 hit、昨日:11 hit、合計:91,684 hit

#夜の空ページ24

宇宙船があったというところまで連れて行ってくれるというから、いつかと思えば今かららしい。

マントを羽織って庭に出たサトを見て、慌てて櫻井も後を追う。

ん、と箒を一本差し出されて、櫻井は困惑した。

「え、箒？」

当たり前のようにサトは箒に座ろうとしていたが、困惑している櫻井を見てあ、と声を上げた。

「そうだった、飛べないよね。ごめん。マサと同じ感覚になってた」

頭を掻いたサト。

そのくらい、サトの中では自分の存在が馴染んできていたのだろうか。

「箒にまたがってくれる？」

言われた通りにまたがると、サトがなにやら魔法をかけている。

「これで大丈夫。あとは箒から落ちないように気をつけてね」
「気をつけるって言われても」

サトは箒に座って、ふわりと浮き上がる。

そのまま空に上がっていくサトを見ていたら、自分がまたがっていた箒も浮き始めた。

「わわっ」

慌てて箒を掴む。

少しバランスを崩したら落ちてしまいそうだ。

「おー、センスあるじゃん。僕、初めて箒に乗ったときは何回も落ちたよ」

櫻井が落ちずにサトがいる場所まで浮き上がってきたのを見て、サトが笑っている。

「落ちてはないけど余裕はない」

カチコチになっている櫻井を見て、またサトが笑う。

「大丈夫だって。僕もこの間、箒から落ちてるんだから。ずっと乗ってても落ちるときは落ちるから、そんなものだよ」

ほら、あれ見てよとサトが指差している先を見て、櫻井は目を丸くした。

森の中に落ちている宇宙船。

なるほど、宇宙船を知らなければ大きな白いものが落ちてきた、と思うはずだ。

ついでに辺りを見回してみれば、サトの家も森の中にあることに気がついた。

街らしきものも遠くに少し見えるが、暗いためよくは分からない。

その街の近くに、何やら大きな城のような建物もある。

ぼーっと城のような建物を見ていることに気付いたのか、サトがそちらの方角を見る。

「あぁ、あれ？あれが学園だよ。結構近いでしょ」

そう言ってサトは肩をすくめる。

「ちか……近いかなあ？」

櫻井は首を傾げる。

かなり小さく見えるような気がする。

「飛んだらすぐだよ。歩いたら一日くらいかかりそうだけど」
「あぁ、なるほど」

結構な距離があるように感じたのは間違いではなかったらしい。

空を飛ぶとなると『結構近い』になるんだな、と櫻井は一人で納得する。