アラニュエの森 (ページ15)

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#違いページ15

今日はサトが学園に行くらしい。

気づいたときにはもう家にいなかったため、かなり早く出て行ったのだろう。

サトがいないのだから、マサも学園に行くのかと思えば、マサは家にいた。

一階に降りていったら、ユキと一緒におはよう！と言われた。

「二宮は？」
「ニノはね、庭でなんかやってるよ。なんかを確認してみたいって言ってた」

マサはよく分かっていないのだろう。

情報が何もない。

それでも櫻井は二宮が何をしているのか大体察した。

二宮の相変わらずの研究癖に、櫻井は苦笑して庭を覗く。

「二宮」
「あ、櫻井さん」

しゃがんでいた二宮が振り返った。

目の前にはマサが育てているという植物。

「そろそろ、櫻井さんって呼ぶのやめてくれない？櫻井でいいって」
「癖なんですよ、勘弁してください。それより、見てくださいよ」

これ、と二宮が指さす植物を、櫻井もしゃがんで観察する。

葉は少なく、正しく成長しているのかどうか、よく分からない植物だ。

「この植物、クラミっていうらしいです。食べ物というより、薬の材料になることの方が多いらしいんですが食べられなくはない、って言ってました」
「それはマサが？」
「はい」

マサの言うことが、どこまで信用できるものなのか分からない。

苦笑いをしている櫻井を見て、二宮も察したのか苦笑する。

「それは置いておいて。このクラミっていうの、不思議ですよね。重力に完全に逆らってるんですよ。この葉とか、少しくらい引っ張られてもおかしくないと思うんですけどね」

葉に少し触れる二宮を見て、櫻井も葉に触れてみる。

確かに、少しくらい下がっていてもおかしくないほど、葉は薄く軽い。

それでも、重力なんてないかのように、上に向かって伸びていた。

「松本にも少し話を聞いてみる？専門ではないだろうけど、植物も研究はしてたって言ってなかったっけ」
「そういえば、そんなことを言ってたような気もしますね」

松本の研究分野は、平たく言えば宇宙空間で生物が成長するときにどんな成長の仕方をするのか、というのを確認するものだ。

松本の場合はそれが人間に特化して、宇宙空間で人間の身体にどんな反応があるのか、というのを自分の身体も使って研究していた。

文字通り、身体を張った研究をしている研究者だ。

「にしても、まだ松本は寝てるんですか？」

顔をしかめた二宮。

「宇宙船でも寝起きは悪かったからね。起こさない方がいいよ」

櫻井は肩をすくめた。