アラニュエの森 (ページ39)

今日:6 hit、昨日:19 hit、合計:91,545 hit

＊4 ページ39

「水魔法学の担当があなただから、疑っているわけではないんですよ。客観的に見てもマサの水魔法は評価相応ですから」

それはそうだろう。

サトは知っている学生だからと言って、ひいきするような人ではない。

むしろ、知っているからこそ少し厳しい目で見る。

そんな目で見ても、マサの水魔法は学年トップ相応の、かなりのものだった。

「私からしたら、むしろ風魔法学のハナ先生が、一位だった学生を贔屓しているように見えますけどね。あの学生よりも、マサの方が風魔法は上手でした」

タツ先生の言葉に、サトは目を丸くする。

それはサトも感じていたが、あえて言わなかったこと。

「タツ先生、そう思いますか？」
「私はそう思いますよ。サト先生はどうですか？」
「お……私も、それは思ってました。ただ、水魔法学の担当としては風魔法学の先生と仲が悪くなるわけにもいかないので」

俺、と言いかけて慌てて言い直す。

危なかった、と胸を撫で下ろした。

「そうですよね。基礎魔法学の先生同士が仲が悪いとなれば、学生も気を使いますしね」

マサの記録を見ながら頷いているタツ先生。

「賢明だと思いますよ。火魔法学の先生と土魔法学の先生は仲が悪いので、学生が困っていますから」

そういえばそうだったな、とサトも苦笑する。

サトは授業以外では学園にいないことでも有名な先生だ。

そのため、先生同士の関わりというものも少なく、良くも悪くも面倒くさい人間関係というのはない。

「マサが通い続けたいと言っているなら、学園としては歓迎できるものですよ。一部怪しい科目もありますが、全体としてはむしろ通い続けていただきたい学生ですからね」

パタン、と冊子を閉じたタツ先生。

「正式に、マサをサト先生の弟子にするのはいかがでしょう？」
「……俺の弟子？」

思わず「俺」と言ってしまったが、咎められる様子もない。

「はい。現状も、弟子のようなものでしょう？そうすれば、学園としてもマサの親御さんに話を持ちかけることができますから。ただ、諸々の負担はサト先生、ということにはなりますよ」

うーん、とサトは唸る。

「それに、学園としての事情を申し上げるなら、サト先生が弟子を持たないと、他の先生も弟子を取りにくいんです。水魔法学の休講数もさながら、弟子を取って代わりに授業をやっていただいた方が、ありがたいです」
「……はい。すいません」

思わず苦笑したサト。

なるほど、そちらの事情もあるのか。