#ワームホール ページ22
夜中に突然目が覚めた。
隣を見ても、二宮と松本は眠っている。
別の部屋でもいいよ、とサトからは言われたが、なんとなく申し訳なくて三人同じ部屋で寝ている。
うーん、と少し悩んでから部屋を出た。
階段を降りていくと、ユキが近寄ってくる。
「ユキはまだ起きてたのか」
ユキの頭を撫でながら廊下を見ると、リビングから明かりが漏れていた。
そっと覗いてみると、なにやら真剣な顔をしているサトがいた。
普段ご飯を食べている大きな机に、大きな紙と何冊かの本を重ねている。
古そうな本を広げて羽根ペンを片手に持ち、紙を指差しながら本の記述と比べているらしい。
こうして見ると、確かにサトは研究者だ。
じっと櫻井がサトを見ていると、視線に気づいたのかふっとサトが顔を上げた。
「あれ、サク。どうしたの？」
羽根ペンを机の上に置いて、サトが椅子から立ち上がる。
「何もないよ。ただ、目が覚めちゃって」
「そっか。何か飲む？ 僕、喉乾いちゃった」
「じゃあ飲もうかな」
サトが空の鍋を火にかけたかと思えば、気づいたら鍋の中には水が入っている。
へえ、と櫻井が目を丸くしている間に、あっという間にお茶が入った。
「どうぞ」
「ありがとう」
渡されたコップを手に持ったまま、櫻井もサトが見ていた紙を覗き込む。
サトは自分のコップを倒さないように遠くに置くと、また本に目を落とした。
残念ながら、サトがかけてくれた言語通訳の魔法は、文字には適用されないらしい。
何が書いてあるのかさっぱり分からなかったが、たまにある絵と、どうやら地図らしい紙を見て、何についてサトが調べているのかはなんとなく分かった。
「それ、宇宙図？」
「うん。……あれ、サク読めるの？」
目を丸くしたサト。
言い方からして、文字が読めないことには気付いていたようだ。
「ううん。文字は読めないけど、宇宙図は読んでたから」
書いてある内容は違うものの、書き方が同じだったようで分かった。
中心にあるのがソルセルリーなのだろう。
「そっか」
サトは何か考えていたらしいが、櫻井の顔を見た。
「ねえ、サクがいた惑星では、宇宙のことはどれくらい分かってた？」
「どれくらいって？」
「ワープトンネルって知ってる？」
「ワープトンネル？」
うーんと考えて、ハッと気づいた。
名前の雰囲気からして、もしかしたら。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2021年2月15日 22時
