アラニュエの森 (ページ11)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:91,563 hit

#ご飯ページ11

「ただいまー。わー、ユキただいまー」

庭からそんな声が聞こえてくる。

何事か、とサトを見れば、サトは苦笑して窓に近寄った。

「おかえり、マサ。ご飯できたところ」
「本当？やったあ！」

マサ、という名前に合点がいった。

目が覚めたときに元気に話しかけてきたあの人だ。

近くにいた二宮と松本は目を細めている。

マサのことは知らないはずだ。

庭から直接家に入ってきたマサは、二宮と松本を見て少し動きを止めた。

マサは黒いマントを羽織っていた。

「わあ、目が覚めたの！大丈夫だった？」
「いいから、マサは着替えてきな。そのままご飯食べるの？」

呆れたようにサトが声をかければ、マサははーい、と家の奥に駆けていく。

その後ろを、ユキもついていった。

「あれ、誰ですか？」

二宮がサトに問いかける。

やっと、二人ともこの世界に少し慣れてきたところだった。

「マサ。一緒に住んでるの」

へえ、と松本が目を丸くする。

「一人じゃなかったんだ」
「うん。マサは今日は学園に行ってたからね。そろそろ帰ってくるんじゃないかと思ってたの」

壁にかかっている時計らしきものをサトが見上げる。

自分が知っている時計とはまるで違って、どう読むのかがさっぱり分からない。

「ご飯、わけよっか。ニノ、お皿取ってくれる？」
「はい」

元々二人暮らしのはずなのに、ちゃんとお皿は五つある。

サトが魔法で創り出しているのを、櫻井は見ていた。

この世界は不思議なものだ。

魔法を使えば速いはずなのに、サトは自分の手でご飯を作り、それを皿に分けている。

ご飯と野菜スープ、それに魚らしきものが並び、自分たちの惑星と似たような食べ物があることを知った。

マサがバタバタと走ってくる音が聞こえる。

台所に顔を見せたマサは、サトと同じような、自分たちの惑星にもあったような服を着ていた。

ユキも一緒に戻ってきて、マサの足元をぐるぐる回っている。

「ユキ、ご飯にしようね。ちょっと待ってね」

ごめん、と棚の前に立っていた松本を押し除け、ユキのエサらしきものを取り出したマサ。

皿を取り出してその中にエサを入れ、しゃがんでユキの前にその皿を置く。

ユキはその間、じっと座っていた。

「いいよ、食べな」

そうマサが言うと同時に、がつがつ食べ始めたユキ。

一連の流れをずっと見ていた松本が、へえと目を丸くした。