11éme livre Mort de cuisinier

Cinq-cent-treize ページ32

『さ、どうぞ』

「…」

『あはは…流石に時山さんは入院してらしたからですよ』



ランタービさん、第一の試練の時の僕の実食みてるからなぁ…
箸が動かないのも理解は出来る


しかし



「ちょ、なんで…!」

『ほら、早く食べないと冷めちゃいます
美味しい物には、そりゃ手が動きますって』




考えるより体が動くって言う時がある
まぁいわゆる本能には脳は逆らえない、という事で

なかなかフォークを握らなかったけれど
自然と動いた手に彼女も理解が追い付いていないようだった



『Farcito di pomodoro e manzo(トマトと牛肉のファルチート)

ファルチートはいわゆる詰め物の意味で
トマトと牛肉の組み合わせはイタリアにおいて定番の組み合わせ
トマトのリコピンを食べるには牛肉が一番

牛肉は体を温めて、色々栄養の関係で食べ合わせによっては更に体調にプラスになる

二度挽きしてますから、
あっさりとしていて食べやすいと思いますよ』




すると




「先ほどの司瑛士のように
特別な調理はしていないんだろ…!」

『…そうでしょうか』



後ろの方からそんな声が聞こえてきて



『何なら食べます？
棚に上げるけれど、今の僕はノワールNo.2
それなりの化け物ですよ？』

「…っ」



散々先生から言われているからね
こんな皿じゃ、0点どころかマイナスだって

…今回、ノワールに有利なんだからさ



『僕の皿は、料理人の覚悟を図れる』



さ、貴方はどうかな
なんて、皿を準備しようとした時


-ｻﾞﾜｻﾞﾜｯ

「お、おい」

「あれ!」

「どういう事じゃ!」




僕がいちゃもんの相手をしている間に
ランタービさんが僕の皿を食べたようで
騒がしくなるマスコミ近辺と出場者



『あの、流石に多方面から怒られそうなので
土下座はやめてもらえませんか……』

「私だってやりたくてやってるわけじゃないわよ!
体が言う事きかないの!!」



ガタリ、と椅子から立ったランタービさん
気が付いたら僕に向かって両ひざをついていた

『これは…』

初めてすぎて、ちょっとわかんないや
料理人だったら、ダメな人は多分逃げるんだろうけど
WGOって違うからな…



『とりあえず…っと』

「...っ」


動けないだろうから抱えさせてもらって
椅子に座れるように彼女を降ろす




「アンタの皿…
司瑛士の掛け算や、幸平創真のごり押しとは違う
手数の多さと、引き算!」

『引き算？』

「自分で分かってねーのかよ!」



調理中の幸平のツッコミが聞こえてくる
手数が多いのは承知してるんだけど
引き算？


意味が分からないな

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