10eme livre Mort de cuisinier

Quatre-cent-soixante-et-un ページ29

堂島さんと一緒にやって来たのは
先程離れた調理室で

やっぱり先程出る前に見た田所さんと幸平は
あれからアサヒさんと関わったらしい


『はいはいちょっと通してー!』


入り口の生徒達をかき分けて
堂島さんと調理室に入ると
目を疑う光景が出来上がっていて

『…は？』

「いやいや…!
オイ幸平?!、どうしてそうなった

無事か、しっかりしろ!!」



ゴミ箱に頭から突っ込んだのか
器用に足が伸びている幸平

ぷしゅー…と顔から湯気をあげそうな真っ赤な顔で気絶してるえりなちゃん

そして、反対に真っ青な顔で震える田所さんと



「お!、遅かったなーA」



笑顔のアサヒさん


堂島さんが幸平達の方に駆け寄るのを確認して、
事情を聞こうと僕はアサヒさんの方に近寄った



「きっちり負かしてやったぜ」

『…素性は?』

「安心しろ
野望とオレの話しかしてねぇよ」



食うか?、とアサヒさんが差し出したのは
白いソースがかかった一口サイズのロースカツで

なんとなく、この状況が推測できた



おそらくえりなちゃんの真っ赤な顔は
僕が揶揄った時によく見るもので
調理台には完食されたであろう皿が二つ
そしてこのロースカツ

アサヒさんがふっかけて、乗り気になった幸平が勝負したんだろう
田所さんは審査員ってところか


ｻｸﾘ、と口に入れると
軽い食感と、上にかかったソースは…


『生クリーム、ケイパー、エストラゴン、ネギ…』

「あとらっきょとタバスコな」

『ソース・シャンティーですか』

「流石、感想は?」

『美味い』

「当たり前」


脇腹を小突かれる

ソース・シャンティー
確か…元々パリ北部に実在する街の名前からで
生クリームを使った料理をシャンティー風とか言われたりする…だっけ?

まだ勉強中なんだけどね



すると



「黒翔センパイ…知ってたんすか…!?」



僕がアサヒさんの料理を食べても何もならない所を見て、何かに感づいたのか
目を見開いた幸平が僕の方によたよたとおぼつかない足取りで近づいてきて、声を上げる


「このセンセーが…親父の、まさか…!!」


あ、ヤバい
幸平だけはアサヒさんの使っている包丁を見て
城一郎さんのモノだと無意識に感じとったか…流石親子


此処で二人で身バレは避けたいんだけどなぁ…
と誤魔化しを考えていると


「そいつはアウトだぜ、幸平」

割り込むようにアサヒさんが目の前に立つ


「弟に手出すなら、容赦しねぇよ？」

「はぁ…!?」


幸平は勿論
田所さんと堂島さんも驚いているのが見えて

『…ﾊｧ』


胃が痛くなってきた
本当にやらかした気がするよ

この先大丈夫だろうか

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