8éme livre Mort de 3éme année

Trois-cent-soixante-quinze ページ41

まぁ味って言っても僕にはさっぱりなんだけど
加熱した肉の風味とか、フルーツのさっぱり感とか
ポンコツの僕ですらある程度香りで判断できるんだから、味覚のちゃんとした人達へのインパクトは絶大だろうね



『最初はやけに深皿で、ソースが多いなー、
なんて気になったんだけど』

「ははっ」


「これは…ロワイヤル…？」




ようやく審査員の方でも気づいたみたいだ


ひとくちにRoyaleといえど、
その言葉の意味は幾重にも存在していて


司から受け取った皿の下から
ソレ、だけを切り分けて口に運ぶ



『コンソメ、ポルチーニ茸、卵…
うん、分離してなくて火加減ばっちりだ』

「うっめーー」



ソースの下に隠されていたソレ
Royale(ロワイヤル)


「様々な具を卵豆腐のように固めたものも
ロワイヤルというのよ」


向こうじゃえりなちゃんも説明入れているけれど



簡単にいえば…スープの具に使われる事の多い
フレンチルセットの一つ
卵豆腐のように固められたソレはつるっと滑らかな喉越しを与えて、皿に上品さを与えてくれる



『とは言っても…火加減難しいんだよな』

　

蒸し器などでロワイヤルを作ろうとする時
強すぎると固まりすぎて滑らかさを損ねるし
弱すぎるとコンソメと卵が分離して
まるでゼリーのような層が誕生してしまう


『しかも使ってる具がポルチーニ…』

「ん、なんかあんのか?」

『あぁ』


ハテナマークを浮かべている竜胆に話した

『ポルチーニ茸は脂溶性の香りだから、
クリーム、油脂とかと合わせると
最大限香りが増す、って言われてるんだよ』

「今回でいったら…」

『クリームは使ってないし
せいぜい卵と、コンソメくらいだろ？』



普通ならポルチーニ茸の香りを活かすのには少し厳しい食材のチョイスだっていうのに…


「ポルチーニ茸の香りが一気に広がります…!!」


アンさんめちゃくちゃ悶えまくってるし




『…ﾊｧ』

「ん？、どうしたAー？」


一色の複雑で冒険に満ちた皿も凄かったけど

膨大なセンスと、どんなに無理と言われた食材の組み合わせでもそれを可能にしてみせる腕

司の方が、複雑の度合いが大きかったかな





『いや、


流石司だなぁ…って』

「おう、そうだな!」




もらった皿の最後の一口を食べ終えた


少しだけ、離れた所の
審査員席の会話が聞こえてくる



「でも仕方ないよな、
俺の料理が輝くためだもん」



どんどん登っていくな、ホント


“「十傑評議会、
司瑛士の勝利ーーーー!!!!!」”

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