8éme livre Mort de 3éme année

Trois-cent-soixante ページ26

「食べてくださいますわね、カワイイ“女王”様？」



えりなちゃんがももに自分のスフレを差し出す
…けれど


「…確かにかわいいレベルは中々だよ、そのスイーツ
だけどさ、
もも的には95点」


やっぱりももは指摘する


「茜ケ久保先輩、やはり食感の件で、」

『多分』


「どうして餡子をいれてどら焼きにしちゃったのかな？
そんなことしたら、繊細なスフレ食感や風味がボヤケちゃう

黒糖をメレンゲに混ぜて…スフレパンケーキにするだけでよかったのに」



さっきはえりなちゃんの神の舌に従いたくなるといったけれど
本来スフレは食感や舌ざわりが売りの皿
ももの言っているのは間違いじゃない


「そうすれば100点だったのに
見ただけで分かる、田所恵の品といっしょだね」

『うーん、ありゃ結構不機嫌だな』



ももが先ほどの試合で戦った田所さんのどら焼き
僕が知っている限りじゃ、今まで一番の出来だったと思うけれど
それでももには届かなかった

しかし、

先につながる良い負けだったと思う



「同じどら焼きで来るのは中々、いい性格、という奴でしょうが」

『でも、少し違う』


「果たしてそうかしら？
味わえばわかります
先ほどの試合であなたを不快にさせたものの正体がね」



バチバチと視線をぶつけ合う二人
そして



「だってさブッチー…どうしようか

え？

仕方ないから食べてあげる？
やさしいなーブッチーは」






「アイツマジでコミュ力どうなってんだよ」

『それがもものキャラですから、そういう事言わないでください』



そのままももがえりなちゃんのスフレを口にいれると、




「この…かわいさ…
さけ…られ…ない…!!」





「やっぱ爺の血筋といえど、神の舌か」

「黙りなさいこの爺」

『なんてこと言ってんですか』

「ふん！」




珍しくももが自分以外のスイーツで圧倒されている


「この味の深さは…
隠し味に…ヨーグルトを！」

『なるほど』


ようやく彼女の皿の仕組みが理解できた



『本来のヨーグルトなら本来の酸味が明らかに邪魔するけど、』

「水切りによって尖りのない酸味、純粋な甘味とコクを獲得した
というわけですか」


スフレのさわやかさが真ん中の餡子の甘味を何倍にも押し上げて
審査員やももですら圧倒されるほどの美味しさ




「まさしく神が降りたかの様な常識を超えた啓示的回答…!!」


「私か目指した美味しさは…
“正解”を超えた所でしか
見つからないもの

田所さんのチャレンジングなどら焼きを見なければ、
この品は作れませんでした」


変わったなぁ…えりなちゃん

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