8éme livre Mort de 3éme année

Trois-cent-cinquante-neuf ページ25

「敵のロールケーキに対してパンケーキで返すとは…
真向からぶつかる心意気、お見事です！」

「うふ！」


えりなちゃんの思惑はなんとなくわかる
アリスちゃんも笑ってるし

けど


「Aさん？いかがなさいまして？」

『いや…僕の鼻ボケたかな…』




あの皿からありえない香りがする

すると



「事実を思い込みで否定してんじゃねーよ、このヘタレが」



後ろで先生がぶっきらぼうに言った
どうやら僕は間違ってないらしい


『はいはい…てことは、アレパンケーキじゃないよ』

「え？しかしえりなさんはスフレ、と」



僕の言葉に不思議がるリオ

眼下じゃえりなちゃんの皿が実食されようと
フォークが入るところで


ｰｼｭﾜ




『だって…』



「これは！」

「ただのパンケーキではありません」

「二枚のパンケーキの間に…！」




あの皿から何故か…





「「「あんこが！！」」

『小豆の香りがする』




あんこの香りがするからね

驚いた審査委員に対し、えりなちゃんがようやく説明を始めた




「えぇ…それこそこの一皿の主役
小豆から練り上げ、黒糖で調味を施した

“神域の黒糖こし餡”なのです！」



二つのスフレの生地に挟まれたあんこ
つまりは…



『あれ、どら焼き』

「なるほど」

「流石神の舌…ってことかねー」



「二枚の生地の間に餡子…
つまりはどら焼きって事だな！」

「えっ…！」


反逆者側じゃあ幸平君も同じ説明をしていて
田所さんが目を見開いている


「しかし、いくらスフレにクリームを合わせるモノが存在しているといえど
餡子を使ってしまうと…」

『ああ、普通なら重いよね』



ほら、と指さすと



「ふーん…」

『ウチの学年最強のパティシエが不満そうなんだし』



ももの顏が少しイライラしてる


けれど…




『小豆はとてもデリケート
暖かい気候を好むはずなのに、アレの原産地は十勝産』

「冷涼ですわね」

『うん、寒いとこで栽培される小豆はタンニン…いわゆる渋みの含量が少なくなって
風味が増すんだ』





そんなすでに最高の食材を選び抜き
最上の状態へと持っていく手腕


「全く雑味のない甘み…！」

「流石北海道講座のえりな先生！！」

「素材の理解半端じゃないぜ！」



『知識でありえないとわかってても
従いたくなっちゃうよね』


まさしく料理界の神、というには申し分ないんだろう
そんな勢いがいまのえりなちゃんからは感じることが出来る


そして
そんな彼女は



「お待ちになって？
まだ…もう一人この品を食べて頂きたい方がおりますの」


ちらり、ともう一人の女王を見る

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