8éme livre Mort de 3éme année

Trois-cent-cinquante-huit ページ24

会場の客席にやってくると…



ｰｷｬｰ!


『人酔いしそう…』

「どうやら茜ケ久保先輩のロールケーキ、客席に配っているようですわね」



人の波が動きまくってる




「おさないで順番に並んでね〜」



そこら中にロールケーキの甘い香りが充満していて
香りだけでお腹いっぱいになりそうだ


「すさまじいですわね…」

『もも結構若い人向けに人気だから』


司や竜胆みたいなメイン料理の料理人ははどうしても年配…少なくとも年上のお客様相手の場合が多くなるけれど、ももは結構客層が幅広い



「まるでサイン会だな…」

離れた所で黒木場君の声が聞こえてくる
会場中がもうもものロールケーキに夢中と言っても過言じゃあないこの状況



『さて、これからどうなる…』


えりなちゃんの方を見ると
なにやらペースト生地に



『黒ゴマ…黒糖…、あとバターと卵白？』

「チュイールですわね」

『ああ』



フランス風せんべいともいわれるサクサクとした食感が楽しいお菓子
ってことは…



「材料から推察すると…
薙切さんもスイーツを作ろうとしてるわよね、

学園最強のパティシエを相手に…！」

「うわーーーやりそうーーーー！！！！！」

「いくらえりなっちでも分が悪いんじゃ…！」




スイーツ対決か、このカード


「はっはっは…！
煽りやがるじゃねえか、反逆者側」

「まぁ下手に狙いを外すより、面白いのでは？」

『まぁ、黒糖なんてメイン料理に持ってくるのも一苦労だし
スイーツがルセット立てやすいのもよくわかるんだけど…』



ホントになんでそんなにみんな自信持てるのかねー、
自信のなさに溜息出そう


そのまま調理を進めるえりなちゃんは
メレンゲをフライパンでじっくり焼いていく

なんとなく作る品がわかってきた




『あれ…』

「パンケーキ、ですわね」




最近色んな所で見かけるパンケーキ

スイーツ寄りのモノもあれば、
野菜と一緒に食べる海外風のイメージを売りにしているモノもある
様々な応用が利く料理



「SNSでもよく見かけますわよ」

『ロールケーキVSパンケーキねぇ…まるでSNSのいいね対決みたいだ』




そして


「えりなの品も完成は近いわね」


「がんばれがんばれえーりーにゃん
せいぜいがんばれえーりーにゃん…」



もものやる気のない応援の声を背に




「お待たせしました
お召し上がりください」


えりなちゃんの品もサーブされたけど
一つ気になった


「ほーん」

「見事ですわね」

『？』

「どうかなさいました？」


なんで、アレの香りがするんだ…


「soufflé léger de grâce」

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