ライに溺れて4

弐拾:沖矢side ページ21

Aと有希子さんが抱き合って泣き始めたのを見て俺はそっと病室を後にした
親子の空間に水を差すほど俺も空気を読めない訳ではない

優作「沖矢くん、ちょっといいかな？」
沖矢「私も話さなければいけないと思っていました」

丁度病室前へ歩いて来た優作さんと病院の屋上へ足を運んだ
屋上は落下防止のフェンスが高くまで聳え、中央には備え付けのベンチが寂しく並んでいた

優作「沖矢君、Aの両親のことを知っているかい？」
沖矢「火事で亡くしたと聞いていますが」
優作「Aがちょっと買い出しを頼まれた数分の間に放火されたんだ。当時高校1年生になったばかりの彼の娘はね…
目の前で総てを喪ったんだよ」
沖矢「…」
優作「もう、あの子の“大切なもの”を失わせないこと。それと、あの子を幸せにすること、結婚式には呼ぶこと、子供も幸せにすること
これが守れないなら親として君を認められないな」

声を荒げて怒る訳でもなく
静かに彼女の為の約束を口にして彼女の父親は屋上から姿を消した
俺が反省していることを知っていて敢えて怒らなかったのだろう

怒られない方が身に染みることもある

とても静かな語り方でありながら眼差しは鋭く、まだ許されていないことを雄弁に語っていた

沖矢「Aを笑顔に…幸せにしない限り許されないと言うことか」









俺はまた1つ業を背負った

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