ライに溺れて4

玖 ページ10

家に帰って来て僅かに煙草の香りがした
秀一さんがいるわけ無いのに、“もしかして”と期待してまた心がグズグズと痛む

心が痛い
ココロと言うものが目に見えたなら、私のココロは傷だらけで血が溢れていることだろう

私「…秀一さんがライだったなんてね」

ハッキングで見つけた組織のメンバーの名前
でも、名前だけ分かっても顔がわからなくて
ライは数年前に組織を抜けた
ライは組織へ潜入したスパイだった
それくらいしか知らなかったんだ

何でライが秀一さんだって分かったかと言うと
「裏切り者のライを仕留めた。流石にあの爆発では生き延びる術は無いだろう」
組織のpcから入手した新しい情報だった
今更知ったって意味がないけど

私「私がこのお酒を好きになったのは必然だったのかも知れないね、秀一さん」

酒屋さんの買い物袋から今日買って来たライを取り出す
そう言えば、朋子さんに貰ったライもまだ残ってたはずだ

貴方の名前のお酒で貴方を想いながら貴方の思い出に溺れよう

2つのガラスのグラスに注いだ“ライ”が月光を浴びてキラキラと輝いて綺麗だった
貴方と一緒に飲もうと思ってたのに帰って来ないなんて釣れない人ね

私「乾杯」

グラスをぶつけて一気に煽る
アルコールに強いこの体を初めて怨めしいと思った
速く、貴方に溺れてしまいたいのに

今日はやけに月が輝いていた

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