その5 ページ29
作戦は実にシンプルだ
夕方しか行動していないことが分かっていたので、放課後帰る柳生を後ろから尾行して見守ると言うものだった
そして、その時は思ったより早くやって来た
柳「…っ!?」
「こんにちは、柳生君」
自分とソックリな何かが、音も無く目の前に現れたのだ
柳「貴方は…っ!」
「なんか、変な人に手を貸してもらってるみたいだけど…それももう終わり。今日君の全てを貰いに来たんだ」
話し方は、まるで少年の様で
柳生は眉を顰める
柳「っ私の居場所は私のものです!貴方にお譲りする訳にはいきません」
「えー、なんで?だって不満だったんでしょ?」
柳「っ…」
同じ顔、同じ声なのに
目の前にいる男は自分の知らない顔をしているように見えた
「ゴルフ部から誘われてテニス部になって、相棒はテニスが上手くて、自分はそれに引っ張って貰ってるだけ。人気がある訳でもないし、紳士なんて言われるけどそれは返って重いだけ…何もかも辞めたくなったんでしょ?」
柳「それ…は…」
偽者柳生は、ゆっくり手を差し伸べる
「僕なら、君を助けてあげられるよ。ここならなんのしがらみもなく居られる。存在理由を求められる事も無いんだ」
柳「…あ…」
柳生が、差し伸べられた手を思わず見つめたその時
強い光が二人の間に走った
柳「っ!?」
「ぐっ…!?」
『遅くなってごめん、柳生君』
そこには、柳生に背を向け相手と向き合う雫が
「…君だね?彼に変な手助けしてたの。いい迷惑だよ。彼も救われて、僕も満足する最高の手段を実行しようとしただけなのに」
『…その人の人生は、その人のものだ』
「?」
雫は真っ直ぐ偽者柳生を射抜く
『何を思っても、何を考えても、その人生の主役は本人しかなし得ない…誰かの人生の代わりを担おうとする君は…一生自分の人生なんて送れやしないんだよ』
「ーっ!?…っは!なに?負け惜しみ?」
『いいや、先ゆく君へのせめてもの手向けと思ってくれていいよ』
「…ほんっと、ムカつく…あんたも消えなよ」
そして、偽者柳生がゆっくり雫に触れようとして
雫はその手が触れる前に偽者柳生の額に大きめのお札を貼り付けた
「なっー!?」
『"悪しき害なす悪霊よ、吾の名に従い、静かに眠らん"』
「がっ!?…あ、あぁぁぁぁ!?」
頭を抱えたと思ったら
偽者柳生はまるで吸い込まれる様に
御札の中へと消えていったのだった
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カナタ(プロフ) - とと丸さん» コメントありがとうございます!そうでしたか…私は知らなかったのですが、何件かコメントを頂いているので、お話は削除して訂正させて頂きます。大変申し訳ございませんでした。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2019年10月13日 21時) (レス) id: fbcd1047f0 (このIDを非表示/違反報告)
とと丸 - あの、失礼だとは思うんですけど8話目のモンブランの話とよく似た話を読んだことがあります。これは偶然ですか?? (2019年2月23日 16時) (レス) id: 89ceb7c4c7 (このIDを非表示/違反報告)
アルシェ - 続き楽しみに待ってますね♪このお話とても面白いです! (2019年1月25日 1時) (レス) id: f819ec86cc (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - やゆよさん» コメントありがとうございます!亀更新ながら続いていくのでどうぞよろしくお願い致します! (2019年1月20日 22時) (レス) id: fbcd1047f0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます!お気に入りまで!これからも亀更新ですがどうぞよろしくお願い致します! (2019年1月20日 22時) (レス) id: fbcd1047f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カナタ | 作成日時:2017年7月8日 2時