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あの後は仕事の話したり、台本の読み合わせを手伝ったりしていると大倉が先に寝たからベッドに運び、シャワーを借りた後、自分はソファで寝た。

起きた頃には大倉はどこにもいなかった。

ふと携帯を見ると、時刻は14時。

『仕事やから先出るわ!ゆっくりしとき。あ、オートロックやから勝手に家出てもいいで』とラインが入っていた。
今日はオフだった、何の予定もないし、とりあえず約3日間空けた家にでも帰るか。

+++


ガチャ

3日間空けただけなのに久しぶりに感じる家。ああ、やっぱ落ち着くなんて思いながらも自分の周りを纏う大倉の甘い匂いに気づく。藤ヶ谷よりは甘くねえな、なんて自分の思考に嫌気がさす。


この数年間空いた距離に慣れていた、のではなく寂しくても平気なふりをしていただけなんだ。
デビュー前のバカやって笑うそんな日々がもう今はどこにもない。見つめて笑えば、恥ずかしそうに目をそらして笑う。恥ずかしがり屋で天然で、藤ヶ谷と呼べば、北山と返してくる。近すぎた距離が一番好きだった。それは藤ヶ谷も同じだったのかデビュー当時は、忙しい中でも「辛い」だとか「ドラマの撮影が上手くいかない」だとか、弱音をぶつけてきてくれた。「今何してんの?そっちいっていい?」なんて甘えてくる藤ヶ谷はもう一生見られないのだろう。いつからか、藤ヶ谷の頼る先は横尾さんになっていた。

はあ、とため息をつき思い出されたのは、あの夜の横尾さんと藤ヶ谷だった。

横尾さんに好きだよとはなった藤ヶ谷は俺といた頃よりも甘くて、自分の存在が否定されたようだった。
よみがえる記憶が藤ヶ谷に対する想いを全て否定して搔き消していく。

嫉妬にまみれて藤ヶ谷に言ったあの言葉でさえも、自分を苦しめた。なんであんなこと言ったんだよ。何度後悔しても何も状態は動かず、寧ろ悪化する一方で。

「ふじがや、」

不意に漏らした名前とともに、久しく流していなかった涙が零れる。


+++

ブーブー鳴る携帯の音で世界が始まる。いつの間にかソファに掛けながら寝ていたみたいだ。
画面に表示されていた文字は「大倉」だった。


「もしもし」

「あー北山?帰ったならラインしてや。お前の分の飯買ってきたのにー。」

「悪い。今日はこっちいるわ。明日仕事あるし。」

「わかった、んじゃまた電話するわ!」


「・・・大倉?」


「どうしたん?」


「明日もそっちいっていい?」

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作者名:妖狐 | 作成日時:2019年10月19日 0時

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