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緩い夜風を浴びながら帰る。結局終電の一本前の時間まで長引いてしまった。ヒール、脱いじゃいたい。もう脚がクタクタだ。
駅まで少し遠い私のアパート。ミンソクは隣の駅。大学時代からお互い一人暮らしで、就職してからも同じ部屋に住んでる。
『ミンソク先輩』
呼ぶ度に唇が震えた頃が懐かしい。学生時代の明るい茶髪に、サラッと白いTシャツを着たりしていたミンソクは抜群に格好良かった。男臭くなくて、近づくといい匂いがして、彼の全てが私の体の芯を、激しく揺さぶった。
『お、Aちゃんだ。』
口を開いたときに、歯がぴょっこりと姿を現わす。冷たそうな目が、頬に押し上げられて柔らかく孤を描くのが好きで、他の誰も目に入らなかった。彼だけだった。私の今までの人生で、胸を張って誰かと付き合ったと言えるのは、ミンソクだけ。
優しい新しい彼と、また一つひとつ積み上げていく。まだ始まったばかり、お互いの姿がしっかり見えていて楽しい。彼は私をとても必要としてくれる。欲しい言葉も、熱も、全部くれる。私がいないと駄目だってそう言ってくれる。
アパートの階段を上がって、顔を上げる。私の部屋のドアノブに白いビニール袋が掛かっているのが見えた。
お隣さん？
いや、でも多分旅行中だったはず。時たま壁越しに聞こえてくるおじいちゃんの演歌もここ何日か聞こえてないから。
なんだなんだ。なんか、気持ち悪いぞ。
扉の前まで行って、右を見て左を見た。三回くらい。誰も、いない。
袋の外から目を凝らして中身を見ようとすると、小さい四角い箱が見えた。
恐る恐る、触って、ゆっくりと手に取った。
「………っ…どうして…。」
中身を見て、言葉が溢れた。喉の奥がカーッと熱くなって、体が奥から震える。笑っちゃう位にボロボロと涙の粒溢れていく。
「ミンソク…。」
袋を抱きしめて、そのまま座り込んだ。最初に彼の横顔が浮かんで、少し気だるそうに私の顔を覗き込む表情が蘇った。
体調を崩して、心配をかけるのが好きだった。おデコに手を当ててくれるのが好きだった。行かないでって言えば、ずっと頭を撫でてくれるのが大好きだった。
その時は大切にされてるって、そう思えたから。
袋から、ゆっくりと取り出す。
毎年彼が買ってきてくれていた薬。私が絶対にいつも買い忘れるから。
「ぅぅぅ〜っ…」
痛いよ、苦しい。
どうしてずるいよ。何で今更こんなことするの？
どうして？
ミンソク。
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ギョンスくん(プロフ) - 初めまして、、拝見いたしました、とてもいい作品に出会えたなと嬉しく思うのですが、少し疑問がございまして、、鈴の音がする後輩ちゃんとどうゆう関係だったのだろうかと思うと居ても立っても居られなくえコメントさせていただきました、、(>_<) (2018年7月6日 23時) (
レス) id: 56dfa01b28 (このIDを非表示/違反報告)
かのか(プロフ) - もう！何て言ったらいいのやら。表現が素晴らしすぎる！作文さえもダメダメな私には感想さえもうまく言えないけど。素敵なお話有り難う！こんなしうちゃん、欲しい。 (2015年6月29日 0時) (レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
るー(プロフ) - 初めまして、凄く素敵なお話でした。小説を読んで泣いたのは初めてです。ほんとに素敵なお話をありがとうございます (2015年5月23日 0時) (レス) id: 54f11cc9aa (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - なんだかすごいミンソクっぽいお話で世界感とても気に入りました。他の作品も読んでみます！ (2015年5月9日 23時) (レス) id: 5ca9847b63 (このIDを非表示/違反報告)
rurarura(プロフ) - 始めまして、とてもグッとくるお話でした。もうすっかり感情移入してしまって胸が苦しくなりながらも最後のしうちゃんに全て持って行かれました…いいお話ありがとうございました^ ^ (2015年5月6日 13時) (レス) id: a13f1528f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Naeun.
| 作成日時：2015年4月29日 13時
