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「...立って。」
そう言った彼の両腕が私の脇の下に入った。自分の鼻に彼の肩が当たった。心臓が溢れそうなほどに暴れて、お腹の下がキューッと音を立てて締まっていく。
嬉しくて、悲しくて、近くて、でも心はずっとずっと遠くにあった。
「ほら自分で立たなきゃ。
お前が選んだんだろう？」
街頭に照らされた彼の背中に腕を回して、それで思い切り息を吸い込んだ。その通りだった。彼の優しさを、愛を、手放したのは、誰でもなく自分自身なのだから。
「....っ、立てる。」
ミンソクに支えられながら、立ち上がった。ピリッと痛んだ足首。泥だらけのスーツ。これはタクシーには乗せてもらえないだろうと、深いため息がでる。
電車にも乗りたくない。
どうやって帰ろうか。一人になることを選んだ私には、やはり自分の足で歩いて帰ることが一番の正解な気がした。
「大丈夫。一人で帰れる。」
「どうやって？」
「.....歩いて帰る。もう痛くない。」
「嘘つけ。せいぜい100メートルだろ。ヒールだし。」
「嘘じゃない。自分のことは自分が一番分かってる。」
「全然分かってないよ。お前は弱虫の泣き虫なんだから。」
最後のミンソクの言葉に、頭にカーッと血が上る音が聞こえた。自分でも抑えられない速度で、一気に上まで上りきってしまったのだ。私が、どんな思いで、強くなろうと、
「そういうところが嫌なの！私のこと、一人じゃ何も出来ないって、そう思ってる。」
「違う。思ってない。」
「嘘、嘘だよ...！仕事だって、全部一人で乗り越えて、これから強くなって、それで...。」
「それで？」
やっと彼の顔を見た。黄色い街頭に照らされて、それがまつ毛に反射している。
「それで、ミンソクを後悔させるの。」
はっきりと言いきった子どもみたいな目標。馬鹿だと思って呆れるだろうか、そう思って彼の表情を伺った。
ードクンッ
初めて見る、顔だった。眉間に寄せられた皺。下がった眉。瞳の奥は、青を思わせるようだった。ミンソク...？
その表情は、私の胸の内側にチリチリと火花を散らす。
「A、
シャワーと服。貸してやるから家来い。
そしたらタクシー乗って帰れば良い。」
「でも...。」
「良いから。家に来い。」
彼は静かに、そう言った。静かであるが、その言葉の中には重しが入っているのが見えた。
良し悪しを判断する前に、その勢いに押された私は、首を縦に振っていた。
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ギョンスくん(プロフ) - 初めまして、、拝見いたしました、とてもいい作品に出会えたなと嬉しく思うのですが、少し疑問がございまして、、鈴の音がする後輩ちゃんとどうゆう関係だったのだろうかと思うと居ても立っても居られなくえコメントさせていただきました、、(>_<) (2018年7月6日 23時) (
レス) id: 56dfa01b28 (このIDを非表示/違反報告)
かのか(プロフ) - もう！何て言ったらいいのやら。表現が素晴らしすぎる！作文さえもダメダメな私には感想さえもうまく言えないけど。素敵なお話有り難う！こんなしうちゃん、欲しい。 (2015年6月29日 0時) (レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
るー(プロフ) - 初めまして、凄く素敵なお話でした。小説を読んで泣いたのは初めてです。ほんとに素敵なお話をありがとうございます (2015年5月23日 0時) (レス) id: 54f11cc9aa (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - なんだかすごいミンソクっぽいお話で世界感とても気に入りました。他の作品も読んでみます！ (2015年5月9日 23時) (レス) id: 5ca9847b63 (このIDを非表示/違反報告)
rurarura(プロフ) - 始めまして、とてもグッとくるお話でした。もうすっかり感情移入してしまって胸が苦しくなりながらも最後のしうちゃんに全て持って行かれました…いいお話ありがとうございました^ ^ (2015年5月6日 13時) (レス) id: a13f1528f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Naeun.
| 作成日時：2015年4月29日 13時
