Love Portion N°9 (ページ14)

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ヒューと上がる歓声。

震えながら手をあげると視線が一斉にこちらに向くのがわかった。

【A。この一年、辛いこともあっただろうに

そばにいられなくて、

寂しい思いをさせてしまって…ごめん。

俺も改めてAがいかに大事な存在かって、離れて暮らして気づいたよ】

私を含めた乗客全員が次の言葉を待って息を殺す中、

さっきの子犬系CAだけがちょこんとウィンクをよこしてきた。

【俺は口下手で

なかなか愛情表現ができない不器用な男だけど…

愛してる。君が思ってるより、ずっと】

とたん、熱気と興奮の渦に包まれる機内。

隣の席のおばちゃんたちが「きゃー」と腕を叩いてくるけど、
恥ずかしくって、嬉しくって、もうなにがなんだかわからない。

そこへタイミングを見計らったように
子犬系CAが、なんと真紅のバラの花束を抱えて私の席へ来た。

再びしん、と静まる乗客たち。

【Aがいない人生なんて想像がつかないから…妻になって僕を世界一幸せな男にしてくれますか？】

…みんなが固唾を飲んで私の答えを見守るのがわかった。

目をつむると管制塔にいる緊張したギョンスが見える気がした。

普段のギョンスなら
絶対恥ずかしがってやらないような
サプライズプロポーズ。

それを、私に。

してくれた。

『…っ』

嬉しさに胸が詰まって
今にも涙がこぼれそうで

はい、と消え入りそうな声しか出せなかったけれど。

子犬CAが
「返事はイエスだーーーー！！！！！」
と叫んで

ワーーと爆発した歓声が

ちゃんとギョンスに届いたと思う。

「うおおおおーー」とひときわうるさい副機長の声に

【チャニョル、うるさい】と一言とばした後に

【Aありがとう。指輪と一緒にラゲッジ・エリアで待ってる。あとでね】

とホッとしたような彼の声に
愛しさが溢れ出して
同時に涙も止められない。

「泣いたらアカン笑」と子犬CAが差し出してくれたハンカチと花束を受け取って、
「おめでとう！」「幸せになんなさいよ」と名前も知らない人たちに背中を叩かれたりしてるうちに泣き笑いみたいになってきた。

今、世界で一番幸せな気がする。

「当機は間も無く着陸態勢に入ります。この度はプラネット航空をご利用いただき誠にありがとうございました--」

降りたら真っ先に走っていこう。

切りすぎた前髪が少し伸びた、ギョンスの元へ。

[N°3 Tower, AC187] Fin.