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抜き足、差し足、しのび足…
私たちはホテルの廊下をそーっと歩き、先生の目を盗んで男子部屋の棟へ
ベッキョンの部屋は、よりによってエレベーターから一番遠い部屋だった。
ようやくたどり着いた部屋の前
ソヒョンが私を見て頷く。
私も頷き返す。
震える手でチャイムを押す。
ドアが開いた。
「チャニョル」
出て来たのは、ベッキョンのクラスメイトのチャニョルだった。
「おう。Aちゃん。どうしたの？」
「え、ちょっとね」
すると、奥からベッキョンが顔を出した。
「Aちゃん」
「ベッキョン」
「おじゃましま〜す」
ソヒョンがそう言って私の手を引いてくれて、
私はようやく部屋に入った。
ベッドに座るベッキョン、とチャニョル。
「どした？」
ベッキョンが唐突に聞いてくる。
「特に、用事はないんだけどねっ」
「なんだよー」
「チャニョルは明日のタクシー研修、どこ行くの？」
ソヒョンが助け舟を出してくれた。
「明日は。。。映画村と〜どこだっけベッキョン」
「平安神宮とか言ってなかった？清水寺とか」
「そうなんだ。私たちも平安神宮行くよね」
「うん。映画村も」
私は続けた。
「映画村って今何か撮影してんのかな」
「どうなんだろう。でも、記念撮影とか出来るみたいだよ」
「そうなんだ。チャニョル、一緒に撮ろうぜ」
「おう。てか結構ソヒョンとAちゃんの班と同じとこ回るんだな」
「だね。ちょこちょこ遭遇するかもだね」
ソヒョンとチャニョルが盛り上げてくれて、ベッキョンも笑ってて、よかった。
****
そして、明日はやってきた。
タクシー研修。
映画村では、人力車に乗って記念撮影。
ベッキョンも、同じように、写真、撮ったかな。
二条城でキュッキュッって鳴る床を歩いた。
清水寺の地主神社で、石から石まで目をつぶって歩けたら
恋が叶うというのに挑戦したけど、敢えなく失敗した。
そして、
平安神宮でベッキョンに会った。
朱色の美しい建物の前で、ベッキョンが笑ってた。
少しだけ、話したのかな。
よく覚えていない。
覚えてないけど、
無邪気に笑う横顔は、
今も私の心の奥のほうに刻まれてる
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作者名：nayuta | 作成日時：2018年2月28日 20時
