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慎太郎side
樹の家に通い続け、気がつけば俺は3年生になっていた。
それはつまり、樹が病気を患ってから3年がたったというわけで。
樹の病状は確実に進行している。
もう自分の足では歩けない
自分の手では何も持てない
自分だけでは食事ができない
自分だけでは________________
この3年間、樹の“出来ないこと”を沢山見てきた。
嫌になって、樹の家に行かない日も少なからずあった。
壊れていく、友人が怖かった。
でも、樹の家に通い続けた。それは純粋に、樹のことが大好きだから。
叶わなくとも、横にいて喋りたいと思ったから。
そして、もうひとつ。自分の中で大きな夢が出来かけているから。
「大丈夫だよ樹。こんな小さいんだよ？」
くねくねと安定しない座位で服薬を拒否することも、もう珍しくなくて。
しかめっ面でそっぽを向くかつての同級生は、まるで幼い子供のようだった。
樹母「ほーら、ヨーグルトに混ぜてあるよ？大丈夫、苦くないよー」
てんかん発作を抑える薬、5mmにも満たないその小さな薬を、言うことの聞かない体で拒否をするんだから、見ているこちらも辛くなる。
飲まなくて苦しいのは、後悔するのは間違いなく当人である樹なのに。
それが伝わらなくてもどかしくて、憔悴した顔の樹の母と顔を見合わせてため息をついた。
樹の家に通う理由、もしかしたらお母さんの力になりたいのかもしれない。
独りで闘っている人に手を差し伸べたいのかもしれない。分からないけど。
そんなだいそれた理由なんかじゃないと思うけど。
俺の服を掴んで抵抗するその手は、まるで赤子のようにぬるい握力だった。
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しずく - 面白かったです！更新楽しみにしています。これからも頑張ってください！ (2021年8月2日 21時) (
レス) id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
みみ - 面白いです！ (2020年10月31日 3時) (レス) id: 7af6836f29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くも | 作成日時：2020年9月24日 23時
