終わり ページ19
ジェシーside
「でね、全部枯れたの、こーち先輩が水やりサボってさ〜」
樹(勿体ないな)
「ってか生物科学部ってなんだろね笑」
樹(やってること農家だもんな)
いつもと変わらない、昼休みの屋上。
あの日から俺が決めたこと。
それは「樹と普通に友達でいること」。
樹本人から詮索することも出来たと思う、過去を引き出して苦しさを分かち合うことも出来たと思う。
でも、それは樹自身が望んでいることだろうか。
声が戻らないほど辛いことを、わざわざパッと出のやつに伝えてまで思い出したいだろうか。
彼からなにか伝えるアクションがないのに、俺が出しゃばることだろうか。
だから、樹から何か発するまで待とうと思う。
もしその時が来たら、いっぱい聴こう。
いっぱいいっぱい聴いて、樹が望むなら一緒に泣こう、怒ろう、叫ぼう。
それまでは、樹も、そして俺も普通の高校生でいよう。
“なんか楽しい” で生きている高校生でいよう。
__________
樹(あのさ、ジェシー)
「んー？」
樹(カラオケ、行きたい)
「カラオケねぇ……！いいじゃん！」
樹は少しだけ微笑むと、何かを覚悟したように少しだけ背筋が伸びた。
そして、こちらを伺うように、少しだけ俯いてこう綴った。
樹(わがままごめん。今は声が出なくて、声が出るようになったらカラオケ行きたい。
頑張るから、ちょっとだけ時間欲しい)
スマホを持つ手と、肩がほんのり震えていた。
樹なりに、前を向こうとしている。
過去はそう簡単に清算できない。でも、リアルタイムで起こる「楽しかった記憶」で塗り替えるために、彼なりにもがいている。
ジ「ahaha！頑張らないで、樹はずっとずっと頑張ってたんだから。今は頑張らないことを頑張って。」
そう伝えると、樹は驚いたように大きく目を見開いて
そして、笑った。
ぎこちなくぎこちなく。固まってしまった表情筋を解すかのように、笑った。
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しずく - 面白かったです！更新楽しみにしています。これからも頑張ってください！ (2021年8月2日 21時) (
レス) id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
みみ - 面白いです！ (2020年10月31日 3時) (レス) id: 7af6836f29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くも | 作成日時：2020年9月24日 23時
