恋は甘くない。(黄) (ページ5)

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次の日。いつもより少しめかしこんで勤務するホテルへと向かう。

事務所にたどり着くまでに、何人の人にからかわれたことか。

…それもそのはず、普段は化粧っ気のないわたしが、化粧をしっかりして服装も少しフォーマルにしているんだもん。

アイドルグループを目の前にして、すっぴんなど晒せるはずがないじゃないか。まったく。

優希「気合い入ってんな」

「キラキラなアイドル様目の前にわたしがすっぴんじゃ恥ずかしくてしょうがないもん」

優希「すっぴんも可愛いからいいじゃん」

「まあね？」

なんて、お互いふざけ合っていると、優希の意中の女の子が出勤してきて。

『あ、おはようございます』

「おはよう」

優希「あ、お、おはよ」

にこ、と笑うその女の子。はぁ、可愛い。若いって素敵。

優希「…可愛いよなぁ」

「あんたも顔は悪くないんだから。頑張ればいけるって」

優希「顔も中身もいい男だろ」

というやりとりを程々に、わたしは事務所へと向かった。

支配人と少し話をしていると、トントン、と扉を叩く音が聞こえて。

わたしと支配人は、スっと椅子から立ち上がる。

失礼します、と女性の声が聞こえ、扉が開く。

初めまして、と挨拶をする支配人の声が、なんだか遠くに聞こえる気がする。

わたしと、マネージャーさんであろう女性の後ろにいる彼との間の空気だけが、ピリッと張り詰めているのがわかる。

お互い目を逸らせないから、きっと向こうも、同じ感情を抱いているのだろうか。

会いたくなかった、その人こそが。

岩「…リーダーの、岩本照です」

まさかこんな形で再会するなんて。

避けられない、仕事という環境。

神様は、意地悪だ。