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岩｢Aのせいじゃないから｣
｢…え｣
岩｢…だから。そんな顔、すんな。｣
｢…照はエスパーなの？｣
わたしの言葉に、ひひって笑う。
岩｢…Aの考えてることなんて、なんでもわかるから｣
それは、付き合ってる時からもよく言われた言葉で。
｢…ごめん、わたしがこんなとこ連れ込んだから｣
ぎゅってする力を弱め、わたしの顔を見る照。
岩｢…帰ろうとしたAを呼び止めたのは俺だし、2人になりたいって言ったのも俺だし、ここでいいって言ったのも俺。…全部俺が悪いから。だから、。｣
そんな悲しそうな顔しないで、って。優しく、頬を撫でてくれる。
｢…でも、｣
岩｢…うちのマネージャーがもうすぐここに来る。店の人に言って、裏口から出れるようにしてくれてるらしいから。｣
…改めて、照との距離を感じた。もう付き合っていた頃とは、全然、別の世界の人なんだ。やっぱり、仕事以外で会うことはもう、。
そう思っていると、ボフッと頭に帽子を被せられて。
｢わ、何、｣
岩｢俺の帽子。Aの顔も、バレたらまずいっしょ｣
｢い、いいよわたしは｣
岩｢いいから。…ハンカチと一緒に、それも返してよ？｣
にひひっていたずらな笑顔で笑うんだもん。…そんなの、キュンてするに、決まってる。
｢…ずるいよ｣
岩｢んー？｣
｢…嫌いなのに｣
岩｢ふはっまだそれ言う？｣
わたしのことを再びギュッてしながら、わたしの唇を指でなぞる。
岩｢…ほんとはちゅーしたいんだけど。…したら、止めれなくなりそうだから、やめとく｣
そう言って、わたしの頬にちゅってして。
それとほぼ同時に、個室のドアが開く。
そこにいたのはここの店員さんと、スーツ姿の女性。
『…話は後で聞く。とりあえずここから出ましょう』
スーツ姿の女性に促される照。
『…あなたは、しばらくしたら普通にお店を出てくれればいいので』
そう言い、わたしを睨みつけるように見てくる。
…そりゃそうだ。大事なアイドルに、訳の分からない女が、こんな騒動を起こしてしまったんだから。
｢…すいません｣
ぺこ、と頭を下げると、照が近くにきて。
岩｢あとで電話する｣
わたしだけに聞こえるように、耳元で小さくそう呟いて。
わたしの頭をぽん、と撫で、そのままお店の人とスーツ姿の女性と一緒に部屋を出ていった照。
1人ぽつんと取り残されたこの状況。
ただ虚しく、BGMだけが流れていた。
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作者名：みらくる
| 作成日時：2024年3月29日 17時
