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岩「…ごめん。意地悪な言い方した。」
「…嫌い」
岩「…え」
「…嫌い、だったはずなの。」
岩「…、」
「あんな一方的な振られ方して。…ずっと大好きだった人に、急に、…別れて欲しいって言われて。…今の今まで、顔も見たくないくらい、嫌いだった。…なのに、。」
ああもう、また、涙が、。
「…いざ会ったら、。…昔の気持ちが、蘇っちゃうんだもん。…正直、胸がギュッて痛くなる。でもそれが、辛くてなのか、いい意味での痛みなのか…わかんないの」
甘酸っぱいはずの恋が、今のわたしにはただ苦い思い出で。どうしたって、踏み出せない一歩があって。
こんな恋愛でメソメソするような女じゃないし、そんな年齢でもないのに。
「…ごめん、もう帰るね」
ここにいたって、苦しくなるだけ。この人といると、自分の気持ちがぐちゃぐちゃで苦しくなる。
テーブルの上に置いておいたスマホを取ろうとすると、その手をギュッと掴まれる。
その手を、思わず見つめてしまう。
前と変わらない、大きくて、あったかくて、…安心する、手。
彼の目を見れば、ギュッてする力が、少しだけ強くなる。
岩「…帰んないで」
返事はせず、その手を振りほどこうとするけれど、ビクともしなくて。
岩「…A。…お願い」
今にも消えてしまいそうなくらい小さな声。きっと彼の中で、今日が最後になる。何かそう感じるものがあったのだろう。
そしてそれは正しくて、わたしはもう、仕事以外で彼と関わるつもりなど、なかったから。これで終わりに、するはずだったのに。
彼の真っ直ぐな瞳が、わたしの瞳を捕らえて離さない。揺らいでしまう、この気持ち。…わたしは、どうしたらいいの？
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作者名：みらくる
| 作成日時：2024年3月29日 17時
