恋は甘くない。(黄) (ページ22)

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慌ててバッグからハンカチを取り出そうとすると、スっと横目で、テーブルにハンカチが見えて。

見ると、彼のゴツゴツした手に、ハンカチが1枚。

彼を見ると、使って、と目で訴えられる。

情けない顔をあまり見せたくなくて、ありがと、と小さく呟き、そのハンカチを使わせてもらう。

「…ごめん、洗って返す」

岩「うん。そうして」

やけに威勢のいい返事。

…いや、待てよ。洗って返す、って。また、会うことになるってことだよね。

「…やっぱこれ貰っていい？」

岩「ふはっ。ううん。ダメ。洗って返して？」

少しいたずらな笑顔の彼。…たまたまなのか、わざとなのか。今となってはもうどちらでもいいのだけれど。…まさか自分から、会う約束をこじつけてしまうなんて。…不覚だった。

岩「…ねぇA」

名前を呼ばれ、目を合わせる。

岩「…俺の事、もう、嫌い？」

…嫌い。

…なはずなのに。

またこうして2人で会話をしてしまうと…あの日の辛い記憶じゃなくて、楽しかった日々が、思い出されてしまって。

…返事が、出来ない。