悪者？【3年A組】

74.過去を綴って ページ35

柊「俺には、学生時代から付き合っている恋人がいた。

彼女は、教師の鑑だった。


　
　正義感が強く、いつも、生徒たちだけでなく、俺の味方でもあった。

彼女を見て、俺も頑張ろう、と思えた…。

切磋琢磨し合える最高の友達だった。


　
　しかし彼女が、武智先生の秘密を暴いたことで、フェイク動画を流されて…

それがきっかけで、精神が病んだ。

教師も辞めた。




　俺はその、フェイク動画の証拠を掴むために、武智がいるこの魁皇高校に入った。

だが、学生時代に患っていた癌が再発して、無駄に月日を過ごすことになった。




　そんな時…景山のフェイク動画が、投稿された。

俺は景山に会って、話を聞くことにした。

けどその帰り、景山は武智を説得するために、一人で学校を出て…



……亡くなった。」



宇佐美「じゃあ、やっぱり武智が……？」


柊「…あの日、武智は景山に会っていない。」



　分かってる。

　誰がやったかなんて、ずっと前から分かってた。


　知らない振りをしていた。

　どうでも良かった。


　だから、逃げ続けた。

　色んなものから。



柊「景山を殺した本当の犯人は、


……SNS、mind voiceだ。



景山はフェイク動画を流された後に、マインドボイスで受けた誹謗中傷の数々に、

耐えかねて…


命を絶ったんだ。」


　
　身体中の感覚が変え失せていく様に、


　自分の中に生きる感情が消えていく様に、


　花火が空に溶けていく様に、



　まるで、死んでいく様に。



　
　生きていたんだろうか、「彼女」も。




柊「景山は…泣きながら俺に訴えたよ。



“ 私はもう私じゃない、助けて、先生 ” って…


　
　結局俺は、何もできなかった。

景山の力に、なってやれなかった。

あの日無理にでも一緒に行っていたら…、


　
　こんな悲劇は起きなかったんじゃないかって自分を責めたよ。

でも、その時は回避出来ても…いずれこのままだと彼女は、同じ目に遭ってたんじゃないかって…


　そう…思ったら、俺は今回のことを、きちんと、ちゃんと！

明日の活力に変えるべきだと考えるようになった。」


　
　せんせーの目は真っ直ぐ突き刺さってきた。

　迷いなど、そこには映っていなかった。



　噛み締める様に言い切った言葉を、想いを、零す事無く居られるだろうか。


　ぼくは怪しかった。



　どれだけ苦しくても、語られても、ぼくの心に響くことは、


　有り得そうに無い。

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