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急な出来事で心臓は一気に跳ねる。


今までで1番、近い距離。


ぽつぽつ、傘に当たって跳ねる雨音。


ペトリコールに混じった灰羽くんの匂いがする。


唖然とした表情の夜久さんと、灰羽くんの様子を交互に伺う。


見上げても、いつもの自信ありげな笑顔は見えない。


(……何を考えてるのかわからない)


喜怒哀楽がわかりやすいタイプ、だと思ってたんだけど。


「Aさんもこっちでしょ?」


考えを巡らせるうちに灰羽くんは歩き出していて、歩幅の違いに驚きながらも早歩きで横に並ぶ。


『う、うん……夜久さん、また明日』

「……また、明日」


手を引かれるまま足を進めながら、遠ざかっていく夜久さんに手を振った。


「……」

『……灰羽くん?』


校門を出て、学校近くのコンビニを過ぎて、いつの間にか手と手は繋がれている。


(手、これで2度目だ)


前とは違いお互いの温度が混じり合って、どっちの手が熱いのかわからない。


灰羽くんの手は指が長くて、しっかり握られるだけで優しく包まれてるみたいだ。


手を繋いでいて歩きにくいはずなのに、傘はちゃんと私の上にある。


『肩、濡れちゃうよ』

「……大丈夫です、オレ体丈夫なんで」

『……風邪ひいたら大変だよ?』

「ハイ……」


そこまで言うと、繋がれていた手は離された。


さっきまで繋いでいたから、空気が触れると少し冷たい。


途端、大きかった歩幅は私に合わせてゆっくりになる。


(……合わせてくれてるんだ)


「あの、すんません……オレ調子のりました」

『気にしてないけど……でも、びっくりしたよ』


どうかしたの、と問いかけると彼は空中に答えを探しているみたいだった。


「えと、なんていうか……」


言い淀んだ彼の顔を見上げると、耳が少し赤くなっている。


「一緒に、帰りたかっただけです……」

『……本当に?』

「なっ、本当ですってば〜!」


(それだけじゃない気がしたけど、気のせいだったかな?)


灰羽くんはパッといつもの様子に戻って、コロコロと表情を変える。


いつもより近い距離、たまにぶつかる肩。


傘の中は2人だけの空間みたい。


さっきは後輩じゃなくて……男の人って感じでドキドキした、けど。


「お腹空きました!コンビニ寄っていいですか?」

『うん、でもさっき通り過ぎたよ?』

「ウソ!?戻りましょ!!」


まだ灰羽くんには、言えないな。

5.しとしと→←.



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設定タグ:ハイキュー , 灰羽リエーフ , 音駒   
作品ジャンル:恋愛
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えま - はい!読みます!! (4月6日 18時) (レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…!こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます!!とってもドキドキしました(`・ω・´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました! (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ボルシチ | 作成日時:2024年3月22日 12時

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