【HQ】獅子と純愛

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ちょっと前から頭の中にいるコ。


Aさん。


先輩だけど、こっちを見上げるまんまるの目がなんだか可愛くて、オレの話で笑ってくれるのが嬉しくて。


まだ昼休み話すだけだけど、仲良くなってるつもりだ！


部活終わりはなんだか無性に顔が見たい。そんなこと無理だってわかってるけど。


『……お疲れ様です』


だから雨の音を縫って聞こえてきた声、最初は聞き間違いだって思った。


(でも、もしかしたら……)


目を向けた先に見つけた影。


＿＿＿＿＿あのコの後ろ姿だ。


いてもたってもいられなくて、傘を刺すのも忘れて駆け出してた。


飛び散る水滴がちょっと冷たかったけど、そんなことどうでも良かったんだ。


「Aさーん！」


オレが名前を呼べばピクリと動きを止めて、見たかった顔がこっちに振り向く。


まんまるの、かわいい目。


(会えた、奇跡だ！)


考えなしに潜り込んだ傘の中にはAさんともう1人、ひと足先に部室を出ていった先輩、夜久さんの姿。


(夜久さん……なんで？)


2人は肩がくっつくくらい近づいていて、


ちょっとだけ浮かんでくる、湿気た感情。


(2人って、仲良かったのか)


今までだって、誰を相手にしてもこんな気持ちになったことなかったのに。


(なんか、嫌だ)



オレより近い距離なのが、



オレ以外に笑いかけてるのが、



なんか我慢できなくて。



＿＿＿＿＿独り占め、したくなって。



気づけばオレはそのコの柔らかい手を取って、オレの傘の中に引き摺り込んでたんだ。


「オレと相合い傘しましょうよ」

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